英語と野球 オーストラリアで右腕を振るダルビッシュ2世 中村勝の今

[ 2020年10月26日 08:30 ]

ブリスベン・バンディッツの一員として初めて練習に参加した元日本ハムの中村(本人提供)
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 電話口の声は以前より明るく感じた。端整な顔立ちとしなやかな腕の振りからかつて「ダルビッシュ2世」と呼ばれた男を覚えているだろうか。元日本ハムの中村勝は今、オーストラリアにいる。

 9月18日。オーストラリアリーグのブリスベン・バンディッツと契約合意。「新型コロナウイルスの影響もあって、12月だった開幕予定は遅れると思うのですが、今はそれに向けて準備をしています。ここまではいろいろな方のおかげで順調に進んでいるかなと思いますね」と力強く話してくれた。

 09年ドラフト1位で埼玉・春日部共栄から日本ハムに入団し、通算15勝17敗、防御率4・07。19年シーズン終了後に戦力外通告を受けた中村は次なるステップに“オーストラリア留学”を選んだ。

 「そのままどこかで働く選択肢もあったのですが、このタイミングでしか自由にいろいろとできないなと思いました。言葉(英語)を話せるだけで“幅”が広がる。もし仕事で使わなくても、コミュニケーションツールとしてマイナスにはならないなと思いました」。まずは語学学校での短期留学をスタート。そして、野球の練習も継続して取り組んだ。「もう少し野球をやりたいなという気持ちがありました。野球と英語力。その両方(の望みを)を叶えるということで、縁があってオーストラリアのブリスベンの語学学校に行くことにしました」。現役同様に体が動くうちはやり尽くしたい。何より野球が大好きだった。

 コロナ禍直前の今年3月に渡航。シェアハウスでの共同生活で、英語の勉強は高校時代以来だった。「元々、英語は不得意な教科で、当時もテストの点数は良くはありませんでした。英語力は中学レベルすらあるのかないのか…」。まず現地での授業についていくことが大変だった。分からない単語は辞書で引き「英語で英語を勉強する感じだった」という。

 コロナ禍の影響で一時はオンライン授業も経験。それでも、中村らしく、愚直に、一歩ずつ前に進んだ。語学学校には計4カ月間も通い「まだ自分の考えを一から全て説明することはできないですが、何か聞かれたら答えられるようにはなりました。この間は知り合いの方に“意外と聞けるようになっているね”と言われました」とうれしそうに笑った。

 野球選手としては、バンディッツと契約前にアマチュアのクラブチームの一員としてウインターリーグに参加して右腕を振った。週2度の練習、週1度のブルペン投球。決して本格的なトレーニングを積めたわけではないが「全て先発で8試合くらいに投げました。久しぶりに試合に投げたので、最初の頃はストライク入れるのも大変でした。それでも段々とまとまってきて、徐々にステップアップしたのを感じられました」と充実感をにじませた。

 来年3月までオーストラリアに滞在予定。バンディッツの一員としてシーズンを戦い、その後は未定だという。「英語のスキル自体はまだまだですが、チームに日本選手がいないのでもう少しコミュニケーション取れるようになりたいです。投げられるチャンスをもらえたので、チームが優勝できるために頑張りたいです」。将来のためにやるべきことも、今やりたいこともどちらも全力で取り組む。それが中村の生き方だ。

 きょう26日のドラフト会議でプロ野球の世界に飛び込む者がいれば、当然、去らなければならない者も出てくる。昨今は毎年のように話題に上がる選手のセカンドキャリア。12月に29歳となる中村の生き方は、一つの道を示している。(記者コラム・柳原 直之)

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