球拾い―大リーグのこぼれ話伝えます―

ロボット審判で踏み出す野球の新時代

[ 2022年11月27日 05:30 ]

 大リーグの来季のルール改定は、投球間隔15秒、極端な内野シフト禁止、ベース(塁)を大きくする。球団はこの改定に合わせたチーム編成の真っ最中だが、大リーグ機構(MLB)が目指すのは3年後のロボット審判。AI(人工知能)技術を取り入れた新時代の野球だ。野球は守る側がボールを支配している唯一(?)の団体競技、試合進行はアウトカウントで計られ時計時間はノー。そんな野球の原点から、ずいぶん離れたものとなった。

 この種の規則改定は毎年のことで選手は適応に大変と思うが、「選手の適応力を見くびってはいけない」と各球団の編成本部長たち。ニューヨーク・タイムズ紙は、誰もが改定に前向きと伝える。例えば、投球間隔時間。1球投げて30秒休み、時速160キロ前後の剛速球を投げる。「これが多くの肘、肩の故障を生んだ。15秒ルールは“投げ屋”ではなく“投手”をよみがえらせる」。内野のシフト守備も「ポジション別に必要な固有の技術を失わせた。シフト禁止は優雅な6―4―3の併殺を見せてくれるはず」。チームづくりのトップである編成本部長たちの見解には、説得力がある。目からウロコだった。

 とはいえ、ロボット審判となると違和感が募るのだが、サッカーW杯のオフサイド判定の画像を見て“降参”した。人間は、ある分野ではAIにかなわない。サッカーの審判員が、AI(の技術を応用したシステムと思うが)機器の奴隷とも思わない。審判員諸氏、胸を張って楽しげに判定をコールしていた。野球も新時代に踏み出すのだ。

 本コラムは10シーズン505回、時代の変わり目を機に幕を下ろします。読者の皆さまにお礼申し上げます。(野次馬)=終わり=

続きを表示

バックナンバー

もっと見る