ワクチン未接種を公表した米国のスイマー 批判を受けながらの五輪挑戦

[ 2021年7月25日 11:46 ]

ワクチン接種を拒否している米国競泳男子代表のマイケル・アンドリュー(AP)
Photo By AP

 【高柳昌弥のスポーツ・イン・USA】競泳男子の米国代表、マイケル・アンドリュー(22)は198センチの長身スイマー。25日に行われた男子100メートル平泳ぎの準決勝では全体5位のタイムで26日の決勝に進出した。

 米国の最終予選会では200メートル個人メドレーと50メートル自由形でも代表権を獲得。平泳ぎの代表選手としては米国史上初めて他の種目も兼ねる異色の選手でもある。

 ただし彼は競技以外で注目を集める五輪代表となっている。

 「自分の体の中に、どのように反応するのかわからないものを入れたくない。トップレベルのアスリートとしては、やることのすべては理解できるもの、そして計算できるものでなくてはいけないんだ」

 今月に入って彼は取材を受けた際に、新型コロナウイルスのワクチン接種を受けていないことを公表。もちろん接種自体は個人の意志に任せられており、国際オリンピック委員会(IOC)も接種を出場の義務と条件にはしていないが、現況を考慮するとそれは東京五輪の“共通ルール”という認識も定着している。実際、アンドリューが未接種を公表すると、米国水泳連盟の一部の理事からは批判が集まった。

 AP通信によれば、東京五輪に出場する613人の米国代表のうち約100人がワクチンを接種していない。バスケットボールの男子代表でもあったNBAウィザーズのブラドリー・ビール(28)が感染防止規定(プロトコル)の対象となって東京行きの“切符”を失ったことが大きく報道されると(ワクチン接種の有無は不明)、米国内でも感染防止に対しての意識と認識がさらに高まった雰囲気があったのだが、それでもなお接種に抵抗するアスリートが多いのも確かだ。

 9月に開幕するNFLではすでに全体の85%の選手が少なくとも1回のワクチン接種を受けているが、グッデル・コミッショナーは未接種の選手の感染が原因で試合ができなくなった場合には、対戦相手を含めた全選手の1試合分のサラリーを没収するというきびしい方針を表明。24日なって未接種の選手がマスク着用などの防止対策を怠った場合には1万4650ドル(約163万円)の罰金が科せられることも明らかになった。

 NFLのスタンスとは対極にあるとは言え、アンドリューの判断が間違っているのかどうかは誰もわからない。批判する理由はあくまで社会に根付いている“正論”に基づいてのものだが、新型コロナウイルスの感染拡大を経験している人類が過去に存在していない以上、どんな人にもそこから先に踏み込めない領域がある。

 五輪開幕から2日目。ビーチバレー男子の米国代表だったテイラー・クラブ(29)のように、ワクチンを接種したにもかかわらず(あくまで個人申告)日本の検査で陽性反応を示して出場できなくなった選手もいる。

 五輪史上、最も開催基準が難しい大会。それが東京五輪であると思う。さてアンドリューはどんな成績を残し、どんな体調で閉幕を迎えるのか…。あえて未接種を公表した米国のスイマー。外部の雑音がシャットアウトされる水の中は今、彼にとっての“聖域”なのかもしれない。

 ◆高柳 昌弥(たかやなぎ・まさや)1958年、北九州市出身。上智大卒。ゴルフ、プロ野球、五輪、NFL、NBAなどを担当。NFLスーパーボウルや、マイケル・ジョーダン全盛時のNBAファイナルなどを取材。50歳以上のシニア・バスケの全国大会には7年連続で出場。還暦だった2018年の東京マラソンは4時間39分で完走。

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