改めて振り返る一二三を一二三にした3つの分岐点 女の子に投げ飛ばされた子がついに金メダリストに

[ 2021年7月25日 20:50 ]

東京五輪3日目 柔道男子66キロ級 ( 2021年7月25日    日本武道館 )

<東京五輪・柔道男子66キロ級決勝>金メダルを獲得し感無量の表情を見せる阿部一二三。柔道着の血の跡が激闘を物語る(撮影・小海途 良幹)
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 柔道男子66キロ級代表の阿部一二三(23=パーク24)が、決勝でマルグベラシビリ(ジョージア)に勝利し、五輪初出場で金メダルに輝いた。妹で、女子52キロ級の阿部詩に続く金メダルで、過去に例のない「夏季大会でのきょうだい金メダル」を達成した。強さが目立った今回の五輪。阿部一二三の原点を、今一度探った。

 6歳から始まった柔道人生。小学生のころは女の子に投げられ、泣きながら帰宅した日々が原点だ。それでも練習を積み重ね、中学2年で全国で初優勝。高校生ながら講道館杯、グランドスラム(GS)でも勝利し、スポットライトが集まった。世界選手権も2連覇。「その後1年くらい勝てない時期はあったが、自分が弱くなったわけではない。勝ち切れなかった1年間も無駄ではなかったし、必要なことだった。常に壁は越えられると思っていた」と、過去には逆境を苦にしなかったことを明かしている。担ぎ技を警戒されれば、足技で。東京五輪でも、その姿があった。逆境は、一二三にとって柔道そのものかもしれない。

 自身でも、3つをターニングポイントに挙げる。「1つ目は中2の時の全国優勝。うれしいというよりも、とにかく不思議な感覚だった」。自らも信じられなかった頂点に立ち、大きな自信になった。そして「2つ目は(高2で初優勝した)講道館杯。この優勝で、それまでは夢だった五輪が明確な目標に変わった」。五輪をしっかりと視界にとらえた時に、目の前に立ちふさがったのがライバルだ。「3つ目はやはり、昨年12月の五輪代表決定戦だと思う」。丸山城志郎(27=ミキハウス)と死闘は、もはや伝説だ。日本柔道史上初となるワンマッチ五輪代表決定戦を実施。24分間に及ぶ異例の長期戦の末、阿部が丸山を大内刈りで技ありを奪い優勢勝ちとなって代表に決まった。一二三は、山を越えるたびに強くなった。

 妹の詩が、先に金メダルを獲得して、迎えた決勝戦だ。重圧もあっただろう。この日の優勝インタビューで「2019年の世界選手権で敗れて、妹が優勝して。きょうも決勝戦を妹が先にやって、先に金メダル獲って」と話すと、「うん」と自らに問いかけたようにつぶやいた。そして「でも、僕にはすごい燃えた。絶対にやってやるしかない、と。プレッシャーとか、全然なかったです」と心境を口にした。この東京五輪で、また一回り、大きくなった。

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