藤井王将 攻守2択から強気の応手「仕方ありません」羽生九段の踏み込みにひるまず33手目「7七同桂」

[ 2023年1月29日 05:00 ]

第72期ALSOK杯王将戦7番勝負第3局第1日 ( 2023年1月28日    金沢市「金沢東急ホテル」 )

銀世界を背に対局に臨む藤井王将(撮影・岸 良祐)
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 藤井聡太王将が王者らしく、羽生善治九段の繰り出す3局連続の変化球に強く応じた。羽生が踏み込んだ角成に対し、攻守2択から藤井は33手目▲7七同桂(第2図)と攻めを選択。局面は中盤のヤマ場を迎えた。

 窓越しに望む銀世界へ伝わりかねない衝撃だった。棋士らが集う控室に「行った」と声が上がった。

 羽生が角交換へ踏み込んだ30手目△4五歩。4手目で自ら閉ざした角道を再度開通させた。藤井も気合に呼応するように銀取りの▲3五歩。△7七角成には▲同桂を決断した。

 壁銀を解消する▲同銀も有力だったが、「一手両得」の狙いを秘めた強気の応手。8九桂を跳ね出すことで王の退路を築いた。同時に、羽生の王頭を守る5三銀へ働きかける、▲6五桂の2段階活用も描いた。

 「(7七桂が)負担になってしまう可能性があるが、攻めていけるかどうかの展開です。仕方ありません」

 同銀なら守り重視、同桂なら攻め重視。藤井は桂頭を狙われるリスクを承知で“藤井将棋”を盤上に表現した。

 対戦成績がタイへ戻り、先手番が戻ってきた。本来握れるはずの主導権は雁木(がんぎ)を主張した後手番に委ね、自然な応手を重ねた。タイトル獲得が99期の羽生に対し、11期。32歳年下でもある藤井だが、構えは王者そのものの自然体だった。

 「何をされるか分からない。(雁木も)可能性としてあるのかなと思っていました」

 羽生が採用した雁木の印象について語った。3局連続の変化球。第1局は、後手の羽生が8手目に角交換へ踏み切って一手損角換わり。第2局は先手羽生が相掛かりを目指し、藤井も受けて立った。その流れを引き継いで、羽生の指し手に3度追随した。

 藤井が雁木を指すのは昨年11月、A級順位戦の広瀬章人八段戦以来15局ぶり。副立会人の高見泰地七段(29)は「藤井王将は悪くないと思っているでしょう」と、封じ手の局面を評価した。3六歩、4六歩で藤井の飛車金が封じ込められたが、銀を手持ちにした利も大きいという。

 きょう29日の2日目。「新鮮です」と語る銀世界の記憶と共に、白星先行の1勝を刻みたい。 (筒崎 嘉一)

 ≪封じ手は?≫
 ▼立会人島朗九段 △5二王。他に手が思いつかない。
 ▼副立会人高見泰地七段 △4二王。上部に厚みをつくるため。
 ▼記録係福田晴紀三段 △4二王。3四にある歩を早めに払い、将来的に△3三王と陣形を整えるため。

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