アニメ研究部 山寺宏一

大ベテラン山寺宏一 意外や意外!?大学時代は落語漬け

[ 2017年12月20日 10:00 ]

「映画かいけつゾロリ ZZ(ダブルゼット)のひみつ」でゾロリ役を演じる山寺宏一
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 「映画かいけつゾロリ ZZ(ダブルゼット)のひみつ」で主人公ゾロリを演じている山寺宏一さん。インタビュー後編では、声優になるきっかけとなった落語やものまねについて、さらには長いキャリアの中で培った演技に対するこだわりなどを話してもらいました。

 「ルパン三世シリーズ」の銭形警部、ディズニーアニメのドナルドダック、「それいけ!アンパンマン」のチーズなど、男性から動物までさまざまな声を演じ分ける大ベテラン。13年間演じ続けているゾロリの声については「“こうやって演じよう”みたいなことは特に意識していないんです。ゾロリの顔とか映像を見ていると自然に出る感じですね」とさらりと語った。

 今作ではゾロリだけでなく、トレジャーハンターのゾロンド・ロン役も担当。「過去が舞台なので、本来はゾロリより年上のゾロンド・ロンが年下の設定なんですよね。過去にも演じている役なんですけど、同じ声でいいのか、映像を見たり、現場で話したり、苦労しましたね」と苦笑いで振り返った。

 「かいけつゾロリ」だけでなく、さまざまな作品でいろんな質の声を出している。そのきっかけもなったのは「ものまねと落語」だったという。「小さい頃から声で表現することが好きだったんです。動物の鳴き声とか、テレビに出ている歌手とか。ものまねが好きな子供でした」と笑顔を見せた。

 高校に入ってからは、仲間の前でものまねを披露する機会も増えた。「笑いを取るのが楽しくて、そういう声での表現を伸ばしたいと思って、大学で落語研究会に入りました」。まさに落語漬けの4年間で、「1人で登場人物を何役も演じることが楽しくて、大好きになりました。大学というより、落語研究会に通っていました」と振り返った。今でも寄席に足を運ぶほか、CDも聴くなど、落語を楽しんでいる。

 大学卒業後に「これまでの自分をいかして、声での表現をしたい」と、俳優の養成所に入所。その後、現在の所属事務所に至る。「ものまね好きと落語好きが声優の道へと導いてくれました」。当時を思い返しているように、しみじみとした表情を見せた。

 テレビアニメ「昭和元禄落語心中」では、落語家の二代目有楽亭助六を担当。「落語研究会出身ですからね。“俺がやらなきゃ誰がやる”という気持ちでした。いろんな役を演じる中で、自分の学生時代とか、つながっていく部分があるのもこの仕事をやっていて面白いところですね」。

 さまざまな役をこなす上で、それぞれの声をどのように出しているのか。「“こうやって出します”みたいなことは特に意識していませんね。高さやトーンの調整はもちろんありますけど、心からキャラクターの感情表現をすれば、自然と出るものなんだと思います」と説明。ゾロリの声に関するくだりでも聞かれた「意識せずに」「自然と出る」―。これこそがものまねと落語で培った経験による技術なのだと感じた。

 「演者としてはキャラクターを魅力的に思ってほしいと思っています。なので、声質より、どれだけキャラクターや作品に感情を込めて演じられるかが声優に求められることなのかなと思いますね」と力を込めた。自身のやり方で声色を作り込むのではなく、キャラクターになりきった結果、声が出てくる―そういう感覚なのかもしれない。

 「あくまで主役はキャラクターであり作品なので、お客さんには誰が演じているかを意識させてはいけないと思っています」。声優としてのこだわり、そして、30年以上にわたり第一線に立ち続けられている理由が見えた気がした。(西向 智明)

 ◇山寺 宏一(やまでら・こういち) 6月17日生まれ、宮城県出身。愛称は「やまちゃん」。1986年に声優デビュー。主な出演作に「それいけ!アンパンマン」(チーズ役、カバ夫役ほか)、「ルパン三世シリーズ」(銭形警部役)など。ドナルドダックや「アラジン」のジーニー役など、ディズニー作品にも数多く出演。97年から16年まで、テレビ東京系「おはスタ」の司会を務めた。

 ◇映画かいけつゾロリ ZZ(ダブルゼット)のひみつ 「いたずらの王者」を目指すキツネの主人公ゾロリと、子分であるイノシシのイシシとノシシが、修行の旅をしながら行く先々で活躍する人気シリーズの劇場版第5作。ひょんなことからタイムスリップした3人が、ゾロリの母であるゾロリーヌ、トレジャーハンターのゾロンド・ロンらと謎の怪獣に立ち向かう姿を描いた。山寺とゾロリーヌ役を務める「ももいろクローバーZ」の百田夏菜子が歌う主題歌「夢は心のつばさ」は11月22日にシングルCDとしてリリース。

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