アンチ巨人の虎党・金子達仁氏が特別寄稿 原辰徳、いと恐ろし。常識にとらわれない自覚なき名将

[ 2020年10月30日 22:55 ]

セ・リーグ   巨人ーヤクルト ( 2020年10月30日    東京ドーム )

フリーライターの金子達仁氏
Photo By スポニチ

 大の阪神党で知られるフリーライターの金子達仁氏(54)が、セ・リーグを連覇した巨人について特別寄稿した。原辰徳監督(62)の采配について、アンチ巨人の立場から独自の視点で表現した。

 中谷の満塁弾!

 11―0!

 痛快無比!……な気分が一瞬で吹き飛んだ。

 ピッチャー増田大だぁ!?

 まず込み上げてきたのは憤りだった。ナメやがって。8月6日、伝統の一戦。趨勢すうせいの決まった甲子園のマウンドに、原監督はあろうことか野手を送り込んできた。

 メジャーでは当たり前?

 知るか、そんなもん。日本には日本のやり方がある。いまは亡きノムさんが見ていたら激怒してるぞ……と憤慨していたら、冷たいものが込み上げてきた。

 原辰徳、いと恐ろし。

 日本球界で育ち、かつメジャーでプレーしたわけでもない彼は、この采配が球界の常識に反していることなど重々承知していたはず。にもかかわらず打たれたとんでもない一手。並の監督には到底打てない奇手。

 もし自分が巨人の投手だったら……きっと、震え上がり、かつ、奮い立つ。ウチの監督は、だらしないピッチングをしたら平気で自分から聖地に立つ特権を取り上げる。二度とこんな恥さらしはすまい。神に誓って。

 刻まれたのは、新たなる畏怖。首位を独走し、ちょっとした緩みが出てもおかしくない状況。けれど、こんな采配を見せつけられて、のほほんとしていられる投手などいるはずがない。

 すでに名監督としての名声をほしいままにしている人間が、さらなる説得力、圧迫力を手にしたようで、だから、恐ろしくなった。

 実は、原辰徳が巨人の監督に復帰することが決まったときも、末恐ろしいものは感じていた。彼が、名刺を作って会う人ごとに配っていると聞いて。

 今度の巨人の監督は、“誰もが知っている原辰徳”という立場に安住していないのか?

 実績に、名声に、まるで頼っていないのか?

 俺は凄かった。だから俺のことは知ってるだろ?――なんて日本のスポーツ人が陥りがちな硬直化した自己顕示欲とは無縁なのか?

 ヤバい。ヤバすぎる。

 たぶん、原辰徳は自分のことを名将だとは思っていない。そして、おそらくは、物凄い名将になりたいと思っている。深層心理のどこかで、選手としては辿たどり着けなかった、超伝説的な存在を目指している。

 だから、彼は新しいことへの挑戦を厭いとわない。常識を否定することを恐れない。すでに十分すぎるほど結果を残しているにもかかわらず、もっと、もっと勝ちたい、勝たなければと熱望している。

 最悪だ。

 過去の名声の上にあぐらをかいてくれる人間であれば、若い世代の中に反発する声が芽生えた。足を引っ張るメディアも出てきた。だが、いまの巨人の指揮官は、初対面の人間に名刺を配り、状況によっては野手をマウンドに送り込む人物なのだ。

 だから、決心した。何があっても、この先、この人と出会ってはいけない。巨人の負けを無上の喜びとする人間の一人として、絶対に。

 会ったら、籠絡ろうらくされてしまいそうな予感がするから。(スポーツライター)

 ◆金子 達仁(かねこ・たつひと)1966年(昭41)1月26日生まれ、神奈川県出身の54歳。法大卒業後、サッカー専門誌編集部を経て95年フリーとなり、スペイン・バルセロナで暮らし、欧州サッカーを精力的に取材した。アトランタ五輪代表を描いた「叫び」「断層」でミズノ・スポーツライター賞受賞。サッカーを中心にプロ野球、スポーツ全般を取材。大のトラ党。

続きを表示

「大谷翔平」特集記事

「始球式」特集記事

2020年10月30日のニュース