【内田雅也の追球】明暗分けた得点圏 「一打」を放った梅野、許さなかった青柳、スアレス

[ 2021年5月15日 08:00 ]

セ・リーグ   阪神2-1巨人 ( 2021年5月14日    東京D )

<巨・神>4回2死一、三塁、中前に適時打を放つ梅野(投手・畠)(撮影・吉田 剛)
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 阪神が1点差で競り勝つことができたのは、得点圏での一打が出たからだ。敗れた巨人監督・原辰徳も「あと1本だった。それがこのスコアの差」と話したそうだ。

 4回表2死一、三塁で中前打した梅野隆太郎の一打である。

 一方で阪神投手陣は適時打を許さなかった。走者得点圏で打者7人を5打数無安打、1犠飛、1四球に抑えている。

 先発・青柳晃洋は序盤から逆球が多かった。4回まで毎回の5安打を浴び、2四球を与えたが、最少失点で踏ん張った。

 9回裏、ロベルト・スアレスも1死二塁と一打同点のピンチを背負ったが、三振、遊ゴロと5球で幕を引いた。

 得点圏での攻防が明暗を分けた。

 ただ、以前も書いたように「なぜ、チャンスに強い(弱い)打者がいるのか」という疑問に答えるのは難しい。大リーグでの研究で好機に強いクラッチ打者と弱いチョーク打者との間に因果関係は認められなかった。

 野球の統計分析の元祖と言えるビル・ジェームズはエッセー『霧を甘くみるな』のなかで<クラッチ・ヒッティングなるものが果たして存在するのかどうか、その問いは結論を急がず、さまざまな意見に扉を開いておくべきだ>としている。つまり、理由の分からぬ「霧」だというわけだ。

 自称「野球狂」の心理学者、マイク・スタドラーも『一球の心理学』(ダイヤモンド社)で「謎」としている。

 元ヤクルト捕手、監督の古田敦也は著書『うまくいかないときの心理術』(PHP新書)で<勝負強い人>は<状況を冷静に理解し、求められていることを判断していける人>としている。

 まさに今季の梅野ではないか。リーグ首位の得点圏打率は5割を超える。過去3年平均で8本放っている本塁打は出ていないが、走者を還す打撃に徹している。目立つのは強引さを律した、中堅から反対方向への打撃姿勢である。この夜も外角変化球を頭に入れたうえ、内角速球を詰まりながら中前に運んだのだ。

 「伝統の一戦」はきょう15日、通算2000試合の節目を迎える。この中に含まれないが、初対戦は1936(昭和11)年6月27日、甲子園。北米遠征から帰国した巨人の歓迎試合(非公式戦)で、この夜と同じ1点差で逃げ切った。

 9回裏1死満塁、右飛で本塁突入の同点走者・前川八郎を山口政信の好返球で刺し、甲子園名物だった試合終了のサイレンが鳴り響いた。

 初代主将・松木謙治郎は<待ちに待った巨人との緒戦だけに強烈な印象として残っている>と『タイガースの生いたち』(恒文社)に記した。

 巨人戦はその後、2日後の29日、甲子園で6―5と再び1点差勝利。延長10回裏、藤井勇がサヨナラ打を放った。公式戦での初対決は7月15日、名古屋・八事の山本球場であり、またも8―7の1点差で勝っている。つまり、タイガースは対巨人に初対決から3試合連続で1点差勝利を飾っていたのだ。

 公式戦1999試合目も1点差勝利だった。球団創設以来、受け継がれてきた「打倒巨人」の猛虎魂を見た試合だったと記しておく。=敬称略=(編集委員)

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