【内田雅也の追球】胸に刻みたい阪神の巨人優勝アシスト 本塁打王へ希望膨らむ大山の2二塁打

[ 2020年10月31日 08:00 ]

セ・リーグ   阪神3-3DeNA ( 2020年10月30日    横浜 )

<D・神21> 引き分けに終わって巨人の優勝が決まり、肩を落とす矢野監督(撮影・大森 寛明)
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 ある意味、今季を象徴する試合として覚えておきたい。情けないことに、今季の阪神は最後まで巨人の引き立て役だったのだ。

 「あと1人」で勝利を逃して引き分けた。勝てずに苦しむライバルを助ける形で巨人の優勝は決まった。対戦成績でも大きく負け越した巨人を手助けする試合だった。

 詰めが甘いのだ。

 9回裏2死からクローザー、ロベルト・スアレスがホセ・ロペスに浴びた左越え同点2ランは低めスライダーだった。今のロペスなら緩くて、しかも低めの変化球しか打てはしない。梅野隆太郎のサイン通りか否かは分からないが、150キロ台後半の速球やツーシームでいけば、さく越えはなかったろう。

 直前のタイラー・オースティンは速球一本やりで空振り三振に取っている。確かに誰にでも「魔が差す」ことはある。しかし、あの場面での被本塁打はいけない。大いなる反省点である。

 攻撃面も「あと1本」を欠いた。残塁は13に上り、うち得点圏の走者のべ10人が立ち往生した。好機で打席に向かう際の準備と心構えは依然として来季への課題である。

 打撃陣の光明は二塁打が5本出たことだ。うち3本が得点に絡んだ。

 あるスカウトから聞いた話である。高校生打者の成績で第一にチェックする項目は二塁打だという。「高校通算○発」など、本塁打数にはあまり目を向けないそうだ。

 「ホームラン数に惑わされてはいけない。練習試合も含めての成績であてにできない。グラウンドの広さが全然違うからね。その点、二塁打の数字にウソはない。強い打球を打てる目安になる」

 なるほど、二塁打の数でその打者の力量がはかれるわけだ。プロの世界でも通用する見方かもしれない。本拠地球場の広さはチームによって異なる。広くて、強い風が吹く阪神本拠地・甲子園球場は打者に不利だ。対して東京ドームなどは打者有利な「ヒッターズ・パーク」である。

 今季、阪神はチーム本塁打が104本(セ・リーグ3位)と健闘しているが、二塁打146本はリーグ最少だった=数字は29日現在=。外野手の頭上や間を抜く、強い打球が少なく、これが得点力の低さの一因となっていた。

 大リーグ伝説の強打者ジョー・ディマジオ(ヤンキース)は「全打席、二塁打を狙っている」と話したそうだ。1951(昭和26)年2~3月、前年に来日し、大人気だった米3Aサンフランシスコ・シールズのキャンプに派遣された川上哲治(巨人)や藤村富美男(阪神)がディマジオから直接聞いた話だ。「ジャストミートを心がけていると、甘かったり、高めにきた球はホームランに結びつく。従って、わたしの狙いはいつもライナーで二塁打を放つことにある」

 川上はさっそくディマジオの考えを採り入れた。著書『遺言』(文春文庫)にある。<ホームラン狙いをやめ、アッパースイングからレベルスイング――水平打法へと切り替えた>。川上の異名となる「弾丸ライナー」が生まれた。

 この点、ライナーで左越えに2本の二塁打を放った大山悠輔は頼もしい打撃だった。本塁打王を争う大山は打球を上げたいだろうが、強引さはなかった。二塁打狙いでいれば、いずれ、今のライナーが大飛球となり、さく越えも出る。巨人優勝の夜、大山タイトルへの希望を見た気がした。=敬称略=(編集委員)

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