槙原氏 菅野のホンネに迫る!セは7年連続苦杯の日本Sへ反骨心「やっぱりパになめられたくない」

[ 2020年10月31日 06:00 ]

セ・リーグ   巨人3―3ヤクルト ( 2020年10月30日    東京D )

新旧エース対談!!スポニチ本紙評論家の槙原氏(右)と、13連勝までの写真入りパネルを手に笑顔の菅野(撮影・森沢裕)
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 開幕投手ではプロ野球新記録となる開幕13連勝を達成した巨人・菅野智之投手(31)が、胸に秘めた思いを語った。コロナ禍の中で野球にまい進し、腕から始動する新フォームが昨年痛めた腰の負担を軽減し、球速アップにもつながったと自己分析した。平成生まれで初の通算100勝も達成。8年目で自身初の日本一に挑むエースに、巨人OBで本紙評論家の槙原寛己氏(57)が迫った。 (構成・神田 佑)

 槙原氏 今季を振り返ると13連勝に尽きる。凄かった。

 菅野 調子が悪い日もあれば「今日は勝てるな」と思えた日もありました。自分だけの力では勝ち星は伸びなかった。感謝の13連勝だったと思います。

 槙原氏 9月29日の広島戦。岡本の失策で招いた5回無死二、三塁のピンチをすさまじい気迫で無失点に抑えた。

 菅野 まあ、(岡本は)僕の時ばっかりエラーするんですけど(笑い)。僕が投げた試合は岡本だけじゃなく、いい場面で打ってくれていました。うれしい半面、何かこう自分に対しての怒りというか。「助けてもらっている」とか思ってしまって。「ようやくカバーできるチャンスが巡ってきた」と思えて、力に変えられたのも大きい。

 槙原氏 連勝が止まった試合で苦笑いも出ていた。連勝していても「そろそろ打たれるよな」と、いつも思っていたのかなと。僕もそうだった。

 菅野 もう、ずっと。毎回「勝たなきゃいけない」、「勝ちたい」気持ちの中でそろそろこんなにうまくいかないよなとか。

 槙原氏 コロナ禍で外食など自由にできない環境もあった。野球やケアに割く時間が増えた。

 菅野 ある意味、野球だけに集中できたというのはあります。家にいるしかないので、休みの日でも他球団の試合を見てました。体のケアもそうです。常に野球ばかりでした。

 槙原氏 地方球場の開催もなかった。イレギュラーな要素が減り、同じコンディションで臨んだ。

 菅野 それは間違いなくありますね。「たかが1試合」と捉える人もいるかもしれないですけど、僕はピッチャーなので、ちょっとの感覚の狂いが生じたりする。マウンドは軟らかいですし、地方球場が好きという投手は聞いたことがないです。移動も含め、影響があると思います。

 槙原氏 新フォームに変更した。勇気ある決断だった。

 菅野 毎年新しいことにチャレンジしようと決めているんですけど、昨季はあまり挑戦心がなかった気がする。それが20年のシーズンにつながっている。大きく変えるチャンスだった。

 槙原氏 一番は腰の負担軽減?

 菅野 そうです。最近、どこのマウンドも硬くなっている。軸足によりためてからいかないと、地面につく方の足ばかりに負担が掛かってしまい、また腰を痛めることがあったと思う。

 槙原氏 昨年腰を痛めたのは将来的に見ればプラス?

 菅野 今のところはプラスになっていますけど…。もう二度と味わいたくないぐらいしんどかった。

 槙原氏 結果、全球種で球速が増した。

 菅野 一番大きい副産物でした。

 槙原氏 一番手応えがあった球種は?

 菅野 やはりストレート。全体的にスライダー、フォークの球速も上がりました。ただ、カットボールが真っすぐを待っているバッターに合ってしまうというのが結構あった。

 槙原氏 苦しかった時期は?

 菅野 そんなになかったです。開幕するまでがつらくて、延期が続いて、気持ちもそうですし、体がついてこない時期があった。開幕日が6月19日に決まって、これでまた延びていたら「ここからはピークに持っていけないよ」という気持ちでいた。

 槙原氏 今年は交流戦もなかった。日本シリーズではパの球団が、セを代表する菅野に挑んでくる。

 菅野 やっぱりパ・リーグになめられたくないですよね。

 槙原氏 日本シリーズは7年連続でパが制している。反骨心が聞けたのはうれしい。

 菅野 ピッチャーの記録に関しては、セ・リーグの方が僕は凄いと思う。ビハインドでは代打を送られてしまう。セでは3失点完投とかは、まずできないですから。

 槙原氏 独走優勝した90年のように日本シリーズまで期間が空いた悪影響がないように期待したい。

 菅野 僕はタイトル争いもあるので最後まで投げる。投手コーチと相談しながら、日本シリーズに合わせたローテーションを組んでもらいます。

 【取材後記】新型コロナウイルスの感染拡大の影響もあって、菅野とじっくり話ができたのは今年初めて。何より「なめられたくない」と、パ・リーグへの熱い対抗心を本人の口から聞けたのがうれしかった。私の現役時代も「人気のセ、実力のパ」と言われ、球宴や日本シリーズなどで「負けたくない」と菅野と同様の思いを抱いていた。

 インタビューの前に宮本投手チーフコーチと話す時間があった。宮本コーチは菅野のブルペン投球の「凄み」を力説。捕手が構えたミットがまるで動かないと言い「桑田、斎藤、槙原…。いろんな投手を見てきたけど、あれは凄いよ」と話していた。練習でできないことは試合でもできない。開幕13連勝を成し遂げた凄みで、パ・リーグの猛者にどう対峙(たいじ)するのか。交流戦がなかっただけに、日本シリーズがより一層楽しみだ。(スポニチ本紙評論家)

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2020年10月31日のニュース