深く音楽を愛し…印象的だった仲本工事さんのギタリストとしての顔

[ 2022年10月21日 06:05 ]

仲本工事さん死去から一夜

「ザ・ドリフターズ」の仲本工事さん
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 【悼む】仲本さんにインタビューでお世話になったことがある。コントの話ではなく音楽の話だった。ザ・ドリフターズが1966年、ザ・ビートルズの来日公演の前座を務めていたからだ。

 仲本さんは元々、音楽をやるためにドリフに入った。いかりや長介さんがベース、荒井注さん、高木ブー、仲本さんがギター、加藤茶がドラムというバンド編成。ビートルズの前座の仕事が舞い込んだのはTBS「8時だョ!全員集合」がスタートする3年前のことだった。

 「前座出演の話を聞いた時、えっ?と思った。当時はもう忙しかったから、余計な仕事が入ってきたという感じだった」と仲本さんは振り返った。世界的人気のビートルズに絡む仕事を「余計な」と話すところが、しゃれっ気たっぷりの仲本さんらしかった。

 前座のステージでは、ビートルズも演奏していた「ロング・トール・サリー」(リトル・リチャード)をコント仕立てで披露。「舞台の上で何かを感じている暇はなかった。ビートルズにも会わせてもらえなかった。あの時は実感がなかったけれど、最近になって、凄いことだったんだなと思う」と仲本さん。今から約16年前の話だ。

 当時、仲本さんは毎月1回、ギターの弾き語りライブを行っていた。「よくビートルズの曲のリクエストが来るんだよ。そんな時は“イエスタデイ”とかの出だしだけやって、すぐに“いい思い出がないので…”とやめちゃう」と笑っていた。音楽愛の強い人だった。音楽の話をしていると心底楽しそうだった。せっかく知り合えたのに、仲本さんの生演奏を聴く機会を永久に失ってしまったことが、同じ音楽好きとして無念でならない。(総合コンテンツ部専門委員・牧 元一)

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