渡辺名人 逆襲1勝 開幕連敗の前王将が永瀬王座討ち 18年Lも1勝2敗から挑戦権「巻き返す」

[ 2022年10月21日 05:00 ]

リーグ1勝目を挙げた渡辺名人(撮影・我満 晴朗)
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 将棋の第72期ALSOK杯王将戦(スポーツニッポン新聞社、毎日新聞社主催)挑戦者決定リーグは20日、東京都渋谷区の将棋会館で1局を行い、先手の渡辺明名人(38)=棋王との2冠=が149手で永瀬拓矢王座(30)を下した。前王将ながら連敗スタートの渡辺は待望のリーグ初勝利。永瀬は1勝1敗となった。

 渡辺にとって、生みの苦しみの末にもぎ取った1勝だ。

 先手で角替わり早繰り銀の手順に導いたものの、永瀬の18手目△4二王に「珍しい手。予想になかった」と、序盤から神経をそぎ落とす展開となる。2度目の角交換を経て、後手の角成を「仕方なく」容認。自王は安泰なのに、常に圧をかけられる中盤以降は忍耐の時間だった。永瀬王が1三まで進出した段階では「入王を狙われる展開。行くしかない」と盤面の右サイドに攻め駒を集中させて有効打を浴びせ続ける。温存していた駒台の角を111手目で▲7一に打ち込み「攻めきれる形になった。あとは(永瀬得意の)入王だけに神経を使ってました」と振り返った。

 藤井聡太王将(20)=竜王、王位、叡王、棋聖含む5冠=へのリターンマッチを期した今リーグは、開幕連敗を喫して思わぬ苦戦を強いられている。この日敗れて3連敗となれば、リーグ参戦7棋士全員が3勝3敗になるケースでようやくプレーオフに出場できるという苦しい状況に追い込まれていた。背水の陣で得た勝利の意義は1勝以上に大きい。

 「ここから後半戦、巻き返していきたいと思います」

 振り返れば4期前の18年リーグ、渡辺は前半戦を終えて1勝2敗から3連勝し、糸谷哲郎八段とのプレーオフを制して挑戦権を獲得した。その7番勝負では久保利明王将相手に破竹の4連勝でタイトルを奪還。一度波に乗れば、手がつけられない。前王将は反撃を虎視眈々(たんたん)と狙っている。 (我満 晴朗)

 ≪40手目まで順調路線も…永瀬王座黒星に自省≫挑戦権獲得の有力候補だった永瀬に2局目で黒星が付いた。40手目に△3六角成と馬を作ったまでは順調路線。「それを主張できないと、相手は(駒台に)角銀持ちなのでまずい」と警戒していたものの「(57手目に)▲5八飛とされて馬の効果が薄くなり、組み立てがおかしかったのでは」と自省するばかりだった。

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