秋田中央・野呂田 甲子園の“間”をコントロールしようとした末恐ろしき1年生捕手

[ 2019年8月7日 21:28 ]

第101回全国高校野球選手権大会   秋田中央0―1立命館宇治 ( 2019年8月7日    甲子園 )

<立命館宇治・秋田中央>初回無死一塁、盗塁を阻止する秋田中央一年生捕手・野呂田(撮影・後藤 正志)
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 最上級生でも緊張する甲子園の大舞台。秋田中央の1年生捕手・野呂田漸(ぜん)は落ち着き払っていた。

 初回。エースの松平涼平投手(3年)が先頭に四球を与えると、すぐにタイムを取りマウンドへ。「力んでいる感じだったので、確認に行きました。自分が落ち着かせないと」。その直後の2番打者の初球。二盗を見事な送球で刺すと、松平は2四球を与えたが、無失点で初回を切り抜けた。3回も先頭への死球の直後に、2度目のタイムを取りマウンドへ。毎回走者を許しながらも3年生エースを好リードし、6回まで0―0の投手戦を演出した。

 捕球技術も巧み。ワンバウンドも後逸なしで確実に前に止めた。「春の県大会で自分のパスボールで2点取られて負けた。その後、毎日練習した」。走者を置いた場面では、視界から決して走者を外さないように捕球することに努めていた。

 中学時代は野村克也氏、古田敦也氏ら名捕手の著書を愛読。「最近は読む時間がない」という一方で、高校入学後は動画サイトでプロ捕手の送球動作を研究する。「甲斐(ソフトバンク)選手は難しい。小林(巨人)選手とかを参考にしています」。足の運びなど、自分に合ったものを取捨選択していく賢さもある。
 入学直後の春季大会から正捕手に。それまで正捕手だった斉藤涼平外野手(3年)は中堅に回った。「不安もあった。気まずい雰囲気もあったけど、いろいろな試合の前に涼平さん(斉藤)が声をかけてアドバイスしてくれた。やりやすかった」。その3年生の思いをくみ、自身もレベルアップに懸命に努めた。その1つが「タイム」の使い方だった。

 無死満塁も無得点に終わった7回の攻撃中。その斉藤が走塁中に両足を痛めて、臨時代走が送られた。攻守交代の後も、しばらく治療が続いた。最終的に、中堅手は交代。その時、投手の松平は投球練習を終えて、しばらく時間が経っていた。プレーが再開される直前。野呂田はまたマウンドへ向かった。「流れが相手に行きそうだったので、ひと言“切り替えていきましょう”という風に言いに行った」。この回に失策がらみで決勝点を失ったが、試合の流れを読んだ抜群のタイミング。「春の大会ではできなかった。タイムを取ってピッチャーを落ち着かせたり、間を取ることを意識して、ということは秋田大会を通してできたと思う」と振り返った。

 初めての甲子園、しかも5カ月前までは中学生だった野呂田。「自分の世界に入ってはダメ。全体を見渡すといろいろなものが見えてくるし、いろいろな選択ができるようになる」。そう言って、甲子園特有の展開の速さをも、コントロールしようとした姿勢は、見事だった。

 9回、最後の打席で甲子園初安打となる左前打を放ったが、チームは惜敗。「あっという間に終わってしまった。キャッチャーとしてチームを勝たせられなかった。この悔しさを忘れない。また、甲子園に来たい」。成長した姿で、再び聖地に立つ姿が楽しみだ。

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