跳ねた右桂が陰の主役 藤井王将完勝の口火▲4一馬

[ 2023年1月30日 05:28 ]

第72期ALSOK杯王将戦7番勝負第3局第2日 ( 2023年1月29日    金沢東急ホテル )

A図
Photo By スポニチ

 【関口武史・明暗この一手】封じ手は△4二王。羽生が3筋4筋の位を頼りに手厚い陣形を目指すと、藤井は▲6三角と6筋7筋方面の制空権を求めた。△3四金~3三王と羽生が空中に城を構えたのに対し藤井は▲6三馬△4三金▲4一馬と敵陣に潜り込む非凡な構想を披露。単独の馬なのだが3一から2一と横に滑る狙いが後手は妙に受けにくい。

 さらに△4四王と空中城に入場すると▲3七歩が狙い澄ました一手。△同歩成に▲4五歩の組み合わせで後手陣の城壁を一瞬で無力化してしまった。以下△同金には▲3七桂の跳ね出しが絶品の一手で先手勝勢。藤井の右桂という陰の主役が活躍する構想を▲4一馬の飛び込みから見据えていた藤井の慧眼(けいがん)が光る。

 羽生は苦渋の決断で△3三王と撤退し、形勢の針が傾いた。補修の効かなくなった後手は△8六歩~7五歩~7六歩と攻め合いに活路を求めたが藤井は堂々と打ち合う。そして▲3七桂(A図)と待望の活用が実現し、藤井が一気に抜け出した。

 攻め駒の総数が「飛車角銀では細い展開なので盤上の援軍が必要と考えていた」と藤井が一局の方針を述べている。桂馬の活用で4枚目の攻め駒が盤上に躍動、駒得した銀を▲3六銀と据え、▲3四歩~3五歩と敵王の上部を抑え、完勝の内容で王将防衛に前進した。(本紙観戦記者)

続きを表示

この記事のフォト

2023年1月30日のニュース