羽生九段、完敗 「実験」雁木囲い崩された 「未解決の部分」試すも「まとめ方に問題」

[ 2023年1月30日 05:29 ]

第72期ALSOK杯王将戦7番勝負第3局第2日 ( 2023年1月29日    金沢東急ホテル )

藤井王将(右)に敗れ、感想戦で対局を振り返る羽生九段(撮影・西尾 大助、岸 良祐、河野 光希)
Photo By スポニチ

 羽生善治九段(52)は第2日の昼食休憩時点で劣勢を自覚。その後、捨て身の猛攻に望みを託したが及ばなかった。黒星先行となったが、先手番となる次局の立川対決でタイ勝を目指す。

 大差のついた最終盤、羽生は自王の詰みが確定してから潔く投了した。「封じ手の△4二王が、いい手ではなかったかもしれない。ただ代わりに何があるかは難しいところです」と吐露した心境から察するに、第2日の立ち上がりから指しづらさを認識していたことになる。一局を通じ、ゲインラインの突破には至らなかった。完敗と言えば完敗だ。

 後手番ながら振り飛車の可能性をちらつかせ、藤井に圧をかけた序盤戦。雁木(がんぎ)囲いに進んだのは「未解決の部分があるので」という理由からだ。2年ぶりのタイトル戦で古色蒼然(そうぜん)たる戦型を「実験」する大胆さ。固定観念にとらわれず、常に新鮮な刺激を追い求める羽生らしい進行は、一見プランどおりに見えたものの「まとめ方に問題がありましたね」と実情を明かす。

 前述の封じ手以降は確かに形勢を徐々に損ねた。藤井に角成りを容認する代償に、自王を金銀2枚ずつに囲まれた4四へと待避させる。「ちょっと(相手の)攻撃を緩和する意図だったんですが、なかなか遠回りし切らなかったと」。受けに回っているだけではらちが明かないとばかりに、昼食休憩後の64手目△8六歩(第2図)から猛攻に転じる。藤井が1ミリでも受け損なったら逆転もあり得る状況をつくり続けた。しかし、ここも冷静に切り返されて反撃の芽を摘まれ、結果として藤井の背中は遠くなるばかり。投了後の羽生は気持ちいいほど割り切っていた。

 感想戦では54手目の3三王に代えて4三王を提示され、駒を空打ちしながら「こっちの人(王)?う~ん、(勝負の分かれ目は)ここだったんですか?」と驚きの声を上げながらも「そういうことか…」と、自分なりの咀嚼(そしゃく)を試みる。その眼光の鋭さには一点のよどみもなかった。

 トライアンドエラーを繰り返しての黒星ではあるが、後手での結果にダメージは少ないはず。「気持ちを切り替えて次の対局に臨みたい」。立川対局では楽しみな先手番が待っている。(我満 晴朗)

続きを表示

この記事のフォト

2023年1月30日のニュース