森下卓九段 藤井王将に「高校行ってる時間ある?」と進言の過去 手厳しい言葉の裏にあった期待とは

[ 2023年1月30日 05:27 ]

第72期ALSOK杯王将戦7番勝負第3局第2日 ( 2023年1月29日    金沢市「金沢東急ホテル」 )

インタビューに答える森下九段
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 日本将棋連盟常務理事として対局を見守った森下卓九段(56)は、終局に際し感嘆のため息をもらした。捨て身の反撃に動じない冷静な指し回しに、鮮やかな終盤力。「藤井さんの強さが光った一局でしたね」と静かに振り返った。

 羽生世代の一角で、竜王など過去6回タイトル挑戦した森下は、かつて中学2年生の藤井にとある進言をしたことがある。プロ養成機関「奨励会」の時からハイレベルな将棋を指し、史上最年少の13歳2カ月でプロ棋士一歩手前の三段に昇段した時期だった。問いかけたのは2016年で、常務理事就任は17年から。「今でこそ立場上言えませんが」と前置きした上で、「彼の実力で、まだプロ四段になっていないにはおかしい。中学生相手に“高校に行っている時間はあるのか?”と話しました」と振り返った。

 これにはもちろん理由がある。お隣の囲碁界では井山裕太3冠(33)など、高校進学せず腕を磨く人が多いという。森下は「藤井さんのように特別な才能を持つ人は、若いうちから将棋に専念した方がいい」と思い、アドバイス。手厳しい言葉だが、藤井は深くうなずいたという。その後進学も、21年1月に高校を自主退学。学生との二刀流で2冠を獲得したが、専念した今や年度内6冠の可能性もある。「私の言葉が少しは頭の隅にあったかな」と笑っていた。

 藤井が自身の棋力のピークとして想定するのは、羽生が当時の全7冠を制覇した年齢と同じ25歳。基準まではあと5年もあり、伸びしろはたっぷり。では50代の羽生は、年齢の面で不利なのか?森下は「羽生さんの武器は、戦い抜いてきた経験と積み重ね。私は散々羽生さんにやられてきたので、また“羽生マジック”が見たい」と力を込める。世代の違う大天才同士の戦いから、まだまだ目が離せない。

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2023年1月30日のニュース