谷川九段 王将戦を読む 渡辺王将 第2局のポイントは「切り替え」

[ 2022年1月22日 05:30 ]

第1図(左)と第2図
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 谷川浩司九段(59)が王将戦第1局を振り返るとともに第2局を展望した。第1局については先勝した藤井の111手目▲7六銀(第1図)に感服。自在のギアチェンジぶりに羽生善治九段(51)を連想し「名局」と評した。第2局については渡辺に切り替えを求めた。

 
 「139手でしたが200手くらい指したかのようでした」。前例を離れてから互角の中盤戦が長く濃密に続く。名局の条件を満たしていると分析した。

 相掛かりへ進んだ1日目朝、注目の一手が藤井から飛び出した。渡辺飛車の射程へ41手目▲8六歩(第2図)と突きだした。「令和の将棋も少しずつ変わって、定跡になるかもしれません」。直後、1時間31分長考した渡辺は後日「新時代の手」とブログに記した。

 それ以上に、谷川が印象的として挙げたのが▲7六銀だった。「羽生さんを思い出しました」。王がお互い中段に進出し、激しく寄せ合った終盤戦。突如、自陣へ手を戻した。

 「藤井さんは寄せ合うと負けと判断したのでしょう。それを1分将棋でされるとは」。19歳が見せた、緩急自在の指し回し。自陣を再建する損の少ない一手は渡辺を惑わせ、緊張感と集中力をそぐ効果があった。△6二香、▲5七桂と整備し合い、△5三王。自王を安全にしたものだが、自然に見えてこれが緩手とは不運だった。

 「意味のない手だった」。感想戦で嘆いた渡辺。▲4六銀と働きの弱かった藤井の右銀に活が入ったためだが「それを言うのは自分に厳しすぎる。いいシリーズになりそうです」と谷川は名勝負の予感を語った。

 戦略家・渡辺の先手へ移る第2局。「開幕前から先手番はこれで、と決めた戦型があるはずです」。好敵手・羽生らとの7番勝負で谷川が常々意識したのが、「1つはいい。2つは離されないように」だった。開幕から連敗すれば、残り5局で求められる4勝はハードルが高い。

 「(渡辺にとって)先手での負けは最悪。後手だったので下から2番目です。今度はテニスでいうサーブをキープしにいく番。切り替えることです」。谷川は第2局、立会人としてその行方を見守る。(構成・筒崎 嘉一)

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