ダイヤの原石だったオリックス・西浦 忘れられないサンドバックを蹴る轟音 本当に病気が憎い

[ 2021年9月25日 08:00 ]

2019年1月の自主トレで、キックボクシングで肉体改造中、キレのあるキックを見せる西浦颯大外野手(左)と山崎颯一郎投手
Photo By スポニチ

 引退か。オリックスが24日に発表した西浦颯大外野手(22)の現役引退を、寂しく思った。

 あれは2019年1月。私が2年ぶりにオリックス担当に戻った年の初めだった。山崎颯がキックボクシングの自主トレを行っていると聞いて、興味を抱き付いていった。「西浦も一緒ですが、いいですか」。西浦? 誰だ?

 当時は、明徳義塾から入団2年目の19歳。私が離れていた間に入団した選手で、当日、本人にあいさつしたのを覚えている。だが、ジムで練習を始めると、その才能にすぐに気が付いた。何せ、サンドバックを蹴るスピード、パシーンという音の凄まじさ。「なんのプロだ」と見まがうほどの衝撃を受けた。「運動神経がいいので、教えたらすぐできる」と、ジムのトレーナーの方が話されていたのを覚えているが、すごいヤツがいるな、と認識した。

 そこからは、聞く人、聞く選手から「あいつはやばいですよ」と耳打ちされた。もちろん、良い意味だ。明徳義塾から入団したばかりのルーキーイヤーの18歳。鳴尾浜の2軍戦で、左翼へ流し気味に一発を放ったという。左打者。しかも、決して体が大きいわけではない。「本当に18歳か」とチーム内でも衝撃があったという。

 キャンプでも話題の1人だった。当時の西村監督も早々と「2番構想」を掲げて、実際に開幕スタメンを奪うと、5月10日の楽天戦で球団ではイチロー以来となる10台での本塁打をマーク。その年は77試合に出場し、チームトップの補殺7を記録するなど、何かと「イチロー以来」の文言が付いてきた。そんな西浦も夏場に苦しい時期を迎えたが、たまたま取材していた他球団の編成担当の言葉を思い出し、本人に伝えてあげると喜んでくれたのを覚えている。

 「西浦は1年ですごい成長したと思いますよ。例えば、守備でも、去年は何でもがむしゃらにチャージしてきたけど、今年は試合の流れを見て、色々と判断できるようになった。使い続けないと、もったいないでしょ。あのレベルの選手は、そうそういないんですから」

 いつかは、イチローさんみたいになるのかな。そんな思いを勝手に抱いていた。「ツルさん、どうせ、暇でしょ。動画撮ってくれません?」。暇は余計だ、と思いつつも、彼の打撃練習をスマホの動画で撮影し、送ってあげたことがあった。いまだに私も見返してしまう。昨年11月に厚生労働省の特定疾患に指定されている「両側特発性大腿骨頭壊死(えし)症」を発症。12月に「左大腿骨頭掻爬(そうは)骨移植術」を受け、復帰へ向けて懸命にリハビリを続けていただけに、無念だっただろう。本当に病気が憎い。

 22歳での引退。でも、第2の人生は、その分長いよ。西浦が自身のツイッターに投稿した「プロ野球選手じゃなくなっても僕の将来の夢はずっとプロ野球選手」の言葉を見て、西浦らしいなと思い、少しホッとした。(鶴崎 唯史)

続きを表示

「始球式」特集記事

「新庄剛志」特集記事

2021年9月25日のニュース