“最強セットアッパー”阪神・藤浪 160キロが5球! 原動力は「誰かのために投げる」

[ 2020年10月2日 05:30 ]

セ・リーグ   阪神2-0中日 ( 2020年10月1日    甲子園 )

<神・中(18)>8回1死、好守の北條を指差す藤浪(撮影・北條 貴史)
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 阪神の藤浪晋太郎投手(26)が1日の中日戦で自己最速に並ぶ160キロを5度も計測した。2点リードの8回に登板し2三振を奪うなど圧倒的な内容で1回無失点。再昇格後の中継ぎ起用4試合目で初めて一人の走者も許さず零封勝ちを呼んだ。セットアッパーとして力を発揮し始めた剛腕が、2日から12・5ゲーム差で追う首位・巨人4連戦(甲子園)でもキーマンとなることは間違いない。

 甲子園が“驚いた”。藤浪にしかできない荒ぶる魅惑のパフォーマンス。聖地が「160」に5度、揺れた。

 「狙っていたわけでもないし、勝負する中で、全力を出す中で、たまたま出たかなと」

 “大台”に最高の場面で到達した。2点リードの8回。9月29日に続く僅差リードのマウンドは「死ぬほど緊張した」と振り返った前回よりも競った状況だった。「この前ほどではないけど、緊張しました。岩田さんがテンポ良くきた中で、自分だったんで。何とか抑えたい気持ちが強かった」

 大阪桐蔭の先輩の白星がかかっていた。気負う場面でも、程よい力みはプラスに転じた。堂上を空振り三振に仕留め、迎えた木下への2球目。外角高めにバットが空を斬った1球は160キロを計測した。どよめくスタンド。3球目も160キロで二ゴロに打ち取った。続く井領にも3度マークし、最後は144キロのフォークで空振り三振。計5度の“160キロショー”を演じ終えると、グラブを叩き「おっしゃー」と叫んで、ベンチへ戻った。

 不振だった期間、強く言い聞かせたのは“誰かのために投げる”こと。「苦しい時間が長くて、支えてもらうことが多かった。自然と自分だけじゃなくて、誰かのために投げようと思うようになったんです。それが一番気付けたこと。一番はやっぱり両親ですし、応援してくれるファンの方もそうですし」。

 今年もスタンドには、雨が降ろうとも息子の姿を見守ってきた両親、そして背中を押してくれるファンがいた。「今まで歓声に応えようとかファンの期待に応えようとか、あんまり考えてこなかったけど、こういう人たちのために野球をやらないといけないと思うようになった」。白球を握る力は、昔より少しだけ強くなった。14球に信念を体現した。

 この日から上限2万人程度に引き上げられた観衆は8091人止まり。それでも、背番号19が球場の空気を変え、生んだ熱狂。矢野監督も「晋太郎が投げると球場のムードも上がるし、こういうピッチングをして自信を付けてくれたら、チームにとっても大きい」と、さらなる本拠地との相乗効果を期待する。

 「チームの勝ちを背負って厳しい部分を投げて。いい経験にしたいし、チームの勝ちにつながるような投球をしたい」。“誰かのために”を実感する「新天地」で藤浪が息を吹き返そうとしている。 (遠藤 礼)

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