空手界の“顔”植草歩 大粒の涙で告白「キャラクターだけで走っているのではないかと苦しかった」

[ 2021年8月7日 17:33 ]

東京五輪第16日 空手・女子61キロ級 ( 2021年8月7日    日本武道館 )

 女子組手61キロ超級1次リーグで敗退が決まり、引き揚げる植草歩=日本武道館
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 1次リーグA組の植草歩(29=JAL)は2勝2敗で1次リーグ敗退が決まった。

 最終戦を終えて、すぐのインタビューで植草は当初は笑顔で「ありがとうございます。(得意の中段への突き)気持ちよかったです」と振り返っていたが、敗退の話になると表情を曇らせた。

 「まだ、この試合(1次リーグ最終組の対戦)次第で分からないものもあるので、あきらめてはいないのですけど…」と話すと約10秒間も沈黙。そして「ここまで来るにあたって、私が勝つことを信じて応援してくださった方々のために勝利することはできなかったですが、五輪というこの舞台で初めての空手をすることができたことは幸せだと思います」と話した。

 5人総当たりの1次リーグ戦はまさかの連敗スタート。その後、連勝して2勝2敗まで粘ったが、メダルが確定する準決勝進出とはならず、「これが実力だということ。一緒に練習してきた方々のためにも絶対に勝ちたかったですけど、本当に申し訳なく思っています」と、ざんげした。

 そして、空手のために“広報活動”をするなど、苦労した20年間の空手人生を振り返る質問では、大粒の涙を流した。「楽しかった空手から、表に出るようになって、初めは実力が伴っていないのではないか、すごくキャラクターだけで走ってしまっているのではないか、と苦しかったんですけど、言葉の力や応援する方々の力が私をここまで強くしてくれて、この舞台に立たせてくれた。今まで自分に携わってくれた全員の方のおかげだと思うので、素晴らしい空手人生を送ることができた」と口にして、最後は「コロナ下の中で開催が危ぶまれていたが、このように無事に、ボランティアの方やいろんな人のおかげで開催できたことを本当に感謝しています」と話した。

 植草は13年の東京五輪開催決定後、空手界の“顔”として追加種目入りを目指す活動に積極参加。14年にはアピールのために開かれた会見で「あの夢の舞台で優勝します」と宣言し、現役を継続した。16年の世界選手権では悲願の初優勝。メディア出演にも積極的に取り組んで、空手のアピールに貢献してきた。今年3月には帝京大時代から指導を受けてきた前強化委員長の香川政夫氏をパワハラで訴えるトラブルを乗り越えたが、悲願のメダルには届かなかった。

 ◆植草 歩(うえくさ・あゆみ)1992年(平4)7月25日生まれ、千葉県八街市出身の28歳。小3で空手を始める。柏日体高(現日体大柏)―帝京大―高栄警備保障―JAL。13年ワールドゲームズ、16年世界選手権、18年アジア大会優勝。18年世界選手権は銀メダル。昨年3月に東京五輪61キロ超級代表に内定。得意技は中段突き。家族は両親と姉。1メートル68、70キロ。

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