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「天才」乙黒拓斗 男泣きの金メダル「兄の借りも返したい思いで頑張りました」

[ 2021年8月7日 20:29 ]

東京五輪第15日 レスリング男子フリースタイル65キロ級 ( 2021年8月7日    幕張メッセ )

レスリング男子フリースタイル65キロ級で、金メダルを獲得した乙黒拓斗(左) (AP)
Photo By AP

 レスリング男子フリースタイル65キロ級の乙黒拓斗(22=自衛隊)が、決勝でハジ・アリエフ(アゼルバイジャン)を下し、金メダルを獲得した。日本男子勢としては2012年ロンドン五輪の男子フリースタイル66キロ級・米満達弘以来、2大会ぶりの金メダルとなった。

 緊迫の試合を制した。第1ピリオドは2-2の同点。第2ピリオドも終了間際まで迫られたが、残り約15秒でポイントを奪い、最後は1ポイント差まで迫られたが逃げ切り勝ち。試合後は感極まって号泣し喜んだ。

 「苦しいことが多くて。それでも周りの人達のおかげで、ちょっとずつ前に進んで、本当に夢をかなえられて、すごくうれしいです。(試合最終盤での逆転に)開催されると信じて、できる準備をして、それがラスト30秒でいかされて、後半取ることができました」

 1回戦では落ち着いた試合運びでトゥルガ・トゥムル・オチル(モンゴル)に完勝。勢いに乗って、2回戦では実力者のイスマイル・ムスカエブ(ハンガリー)、準決勝では世界ランキング1位のガジムラド・ラシドフ(ROC)を撃破した。だが、乙黒拓の力を知っている世界からは厳しいマークを受けた。「本当にすごいプレッシャーで、五輪も最終日ですが始まった時から違う競技の選手が金メダル獲ったりして、今大会は(男子)フリーが1個もメダルが獲れていなくて自分に回ってきて。厳しいトーナメントだったが、みんなが一致団結して自分を勝たせようとしてくれて、すごくうれしいです」と話すと、涙が止まらなかった。

 幼少期から「天才」と言われた有望株だった。出身の山梨県を離れ、有望選手を寄宿制で育成する日本オリンピック委員会(JOC)のエリートアカデミーで高校6冠を獲得するなど成長。山梨学院大に進学すると、高田裕司監督や小幡邦彦コーチらの指導で実力に磨きをかけた。シニアの国際大会デビュー戦となった2018年4月のW杯では61キロ級の世界王者を撃破。さらに同年10月の世界選手権では19歳10カ月で優勝し、74年大会を制した高田裕司の20歳6カ月を抜く日本男子歴代最年少の世界王者誕生となった。五輪、世界選手権を通じて日本男子では初の10代金メダリストだった。

 2019年の世界選手権では3回戦で敗れるなど心配されたが、同年の日本選手権で見事に五輪切符を獲得。今年4月のアジア選手権では1年2カ月ぶりの実戦となりながらも圧巻の強さで連覇。男子レスリング界の「若きエース」に上り詰めた。兄・圭祐はフリースタイル74キロ級で悔しい初戦敗退。切磋琢磨(せっさたくま)してきた兄の思いも背負って戦っての金メダルだった。

 この日は会場内で兄・圭祐も応援。拓斗は「兄が前日に負けてしまって、2人で金メダルはかなわなかったので、その分、自分が全力を出して、兄の借りも返したいなという思いで頑張りました」とスタンドに向けて涙声で話した。天才が、男泣きした。

 ◆乙黒 拓斗(おとぐろ・たくと) 1998年(平10)12月13日生まれ、山梨県笛吹市出身。山梨農林高で競技をしていた父・正也さんの影響で、兄・圭祐とともに4歳で開始。石和南小卒業後にJOCエリートアカデミーに入り、東京・帝京高でインターハイ3連覇。15年世界カデット54キロ級優勝。山梨学院大に進学し、2018年の世界選手権で優勝。20、21年のアジア選手権を連覇した。乃木坂46のファンで、趣味は動画観賞。1メートル73。右構え。

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