喜友名 沖縄金メダル1号!47都道府県コンプリート 空手界の「生ける伝説」圧倒的演武でカタつけた

[ 2021年8月7日 05:30 ]

東京五輪第15日 空手 ( 2021年8月6日    日本武道館 )

空手男子形決勝、金メダルを獲得した喜友名諒(撮影・北條 貴史)
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 空手・形男子で喜友名(きゆな)諒(31=劉衛流龍鳳会)が世界一に輝いた。世界選手権3連覇、全日本選手権9連覇、国際大会のプレミアリーグ通算19勝がギネス世界記録に認定されるなど、空手界で数々の金字塔を打ち立ててきた生ける伝説が、沖縄県出身者として初の金メダルを獲得した。組手男子75キロ級の西村拳(25=チャンプ)、同女子61キロ級の染谷真有美(28=テアトルアカデミー)は1次リーグで敗退した。

 相手を射抜くような眼光は、金メダル獲得の瞬間も揺らがなかった。だがコートの中央に正座し、3秒ほど黙想して見上げた目は潤んでいた。「約束を守ったよ」。19年2月に57歳の若さで亡くなった最愛の母・紀江さんへの報告。表彰式では21年前のシドニー五輪で柔道の井上康生がそうしたように、母の遺影とともに表彰台に上がった。

 「この舞台に立てていることに感謝したい。自分一人ではこの舞台には立てなかった。今は、全てに感謝しかない」

 ギネス世界記録を受賞するなど、数々の金字塔を打ち立て続ける空手界の絶対王者。金メダル確実の声が高い中で、30点満点で金メダル獲得という高い目標を設定した。決勝で選んだ形は、劉衛流の中でも最も難易度が高く、繊細とされる「オーハンダイ」。得点は「アーナンダイ」を打った準決勝と同じ28・72点。満点には届かなかったが、15年間、毎日稽古をつけてくれた佐久本嗣男師範に「満点をあげたい。気持ちが入っていた」と称えられ、喜友名も「先生に満点と言われてうれしい」とはにかんだ。

 対人競技ではない形競技だが、追加種目に決定後は空手界の常識にとらわれず、金メダルを目指してきた。稽古とともに毎日の筋力トレーニングを欠かさず、佐久本氏によれば「蹴りの強さは1トン」と、フルコンタクトの格闘家に見劣らない。3年前からは科学的なアプローチで体づくりにも着手。食事面では脂質を落として2キロの増量に成功。「ゴリラになりたい」ともくろんでつくり上げた体が、戴冠の原動力だった。

 沖縄発祥の追加種目で、沖縄県に初の金メダルをもたらした。「五輪は一番注目される舞台。沖縄の伝統が世界に広がり、たくさんの人に空手をやってもらえる」と喜友名。昨年12月には新型コロナに感染。艱難(かんなん)辛苦の全てを鬼気迫る表情に包み隠した空手の伝道者にとって、24年のパリでは除外となるが、再び五輪に空手を呼び戻すことが次の目標だ。

 【喜友名 諒(きゆな・りょう)】
 ☆生まれ 1990年(平2)7月12日生まれ。沖縄県沖縄市出身。

 ☆サイズ 1メートル70、78キロ。

 ☆得意形 アーナンダイ、オーハンダイなど劉衛流の形全般を得意とする。

 ☆競技歴 5歳で地元道場で空手を始め、中3の時に劉衛流龍鳳会に入会し、以後佐久本嗣男氏から指導を受ける。沖縄・興南高―沖縄国際大を経て劉衛流龍鳳会。

 ☆主な実績 世界選手権は14、16、18年と3連覇中、全日本選手権は12~20年と9連覇中。プレミアリーグ(PL)通算19勝はギネス世界記録に認定。18年のPLドバイ大会まで国際試合96連勝し、連勝ストップ後は再び60連勝。

 ☆SNS 普段は無口だが、約5万6000人のフォロワーを持つインスタグラムは頻繁に更新し、空手の魅力を発信。筋肉美も披露している。

 【喜友名が使用した形】
 ☆オーハン(予選1回目)手技と前進を一気に連続させ、相手に一呼吸もつかさずに一気に追いやる動きが特徴。

 ☆アーナン(予選2回目)劉衛流の特徴的な動きが多い形の一つ。ジグザグで前進、喉をつかむなど、実戦的な動きを正しく演武することが重要となる。

 ☆アーナンダイ(準決勝) 手数が多い形で、貫き手、一足二拳(一歩進む間に2つの手技を出すこと)の技が多い。四方に連続して蹴りを入れるなど難しい形。喜友名は2、3年前まで決勝で使用。

 ☆オーハンダイ(決勝) アーナンダイと同様に手数の多い方。一歩出る間に突き、受け、貫き手の3つの技を決めたり、同じ足で前蹴りから足刀へと転じたり、より繊細さとバランス感覚が求められる形。アーナンダイに代わって五輪決勝での使用を想定してきた。

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2021年8月7日のニュース