女子走り高跳び ラシツケネの美しき初優勝 リオ五輪の悲運から長き道のり

[ 2021年8月8日 00:37 ]

東京五輪第16日 陸上 ( 2021年8月7日    国立競技場 )

女子走り高跳びで優勝し、喜ぶROCのマリア・ラシツケネ
Photo By 共同

 女子走り高跳びのマリア・ラシツケネ(28=ROC、ロシア・オリンピック委員会)はひっそりと優勝ジャンプを跳んだ。なぜ、ひっそりか。陸上競技の最終種目、花形の男子1600メートルリレーが終わり、選手・関係者がその結末に目を奪われているときに2メートル4を成功したのだ。

 バーを落とさずに跳び終えると、競技エリアからスーと離れ、トラック種目のゴール付近にある台の上に座った。2人の試技が残っていたが、視線は一度も向けない。時に手で顔を覆い、足元の芝生に目をやった。自分が跳んだ高さを、ライバルは失敗し、ようやく、立ち上がった。

 「今週は一切の情報に触れませんでした。ネットも何も見ていません。プレッシャーにならない人とだけ、会話をしました」

 優勝が決まるまでの時間、何年分の思いが込められていただろうか。15年世界選手権に優勝。16年リオデジャネイロ五輪でも金色の輝きを期待された。しかし、ロシアの組織ぐるみのドーピング問題が明るみになり、出場すらかなわなかった。17年と19年の世界選手権の世界選手権も制したが、身分は「個人資格」で、ロシア代表ではなかった。

 東京五輪もロシアとして選手団の派遣を認められていない。潔白を証明した選手のみが、個人資格で出場している。複雑な感情を抱えての勝利だった。 

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2021年8月7日のニュース