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レスリング・向田 吉田沙保里とのスパーで鍛えた心身&婚約者・志土地コーチとの愛でつかんだ金

[ 2021年8月7日 05:30 ]

東京五輪第15日 レスリング女子53キロ級決勝   向田真優5ー4ホウ倩玉 ( 2021年8月6日    幕張メッセ )

女子53キロ級決勝 金メダルを獲得した向田真優(左)
Photo By 共同

 女子53キロ級で初出場の向田真優(24=ジェイテクト)は決勝でホウ倩玉(中国)を5―4の逆転で破り、金メダルを獲得した。前回16年リオデジャネイロ五輪で4連覇を逃した吉田沙保里(38)の階級で日本勢が2大会ぶりに女王の座を奪還した。婚約者である志土地(しどち)翔大コーチ(34)と二人三脚で歩いた若きレスラーが、吉田の後継者としてまばゆい輝きを放った。

 ずっと、この瞬間を待っていた。向田は、セコンドの志土地コーチと見つめ合うと、涙が止まらない。人目をはばからず、婚約者と涙の抱擁を交わした。「ずっと二人三脚で頑張ってきた。2人の夢をかなえることができてうれしい」。愛の力が結実した。

 ドラマチックな逆転勝利だった。第1ピリオドでは0―4の劣勢。志土地コーチの頭に嫌な予感がよぎる。「僕たちの関係は賛否両論ある。このまま生きていけるかな…」。金メダルだけが、2人の関係を肯定する証明だ。「ここでいかないと絶対後悔するよ!」。セコンドから必死に振り絞るコーチの声を頼りに、向田は最後に相手を場外に引きずり出した。

 いつだって判断基準は自分がどう感じるか、だ。吉田沙保里らを輩出した三重で育ち、中学で地元を離れてJOCエリートアカデミーに入校。卒業後は、ライバル校の至学館大に進学する異例の決断を下した。「五輪に出るためにはそこが一番近道」。信念は揺るぎなかった。

 吉田の後輩となり、週1回のスパーリングでは数え切れないほど、はじき返された。「私に勝たなきゃ、オリンピックなんてないよ」。吉田からの言葉が悔しかった。17年世界選手権では銀メダル。吉田が13年連続で守り続けた女王の座を譲り、周囲が心配するほど涙に暮れた。

 折れそうな心を鼓舞し続けてくれたのが、志土地コーチだった。大学4年で交際が公になり、強い批判にさらされても一緒に戦うと決めた。卒業後は東京に拠点変更。コロナ下では河川敷での打ち込みや走り込みなど、心から信頼するパートナーと東京のマットに向かってきた。

 周りが何と言おうと、進路も婚約も全て自分で決めてきた。長年、けん引してきた吉田のバトンを受け継ぐ悲願の金メダル。「凄く重いです」。それは、己の道を歩んできた決意と努力の結晶だった。

 ◇向田 真優(むかいだ・まゆ)1997年(平9)6月22日生まれ、三重県四日市市出身の24歳。四日市ジュニアで5歳から競技開始。中学1年でJOCエリートアカデミーに入校。安部学院高―至学館大卒。14年南京ユース五輪52キロ級優勝。16年世界ジュニアは全試合テクニカルフォール勝ちで制覇。55キロ級で16、18年世界選手権V。母・啓子さんと姉は元空手選手、弟も元レスリング選手。父・淳史さんはブラジリアン柔術の全日本選手権に出場。学生時代はカヌーで五輪出場を目指していた。1メートル57。

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