「鎌倉殿の13人」最終回も“ジャズ”政子が義時に寄り添った“衝動”大河史に刻む壮絶13分ラスト舞台裏

[ 2022年12月18日 21:00 ]

大河ドラマ「鎌倉殿の13人」最終回(第48話)。毒が効き、悶え苦しむ北条義時(小栗旬)(C)NHK
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 脚本・三谷幸喜氏(61)と主演・小栗旬(39)がタッグを組み、視聴者に驚きをもたらし続けたNHK大河ドラマ「鎌倉殿の13人」(日曜後8・00)は18日、最終回(第48回)を迎え、完結した。主人公・北条義時の最期を大河史に刻み込んだ衝撃的な結末に、SNS上は放心&号泣。小栗と女優・小池栄子(42)、2人きりによる一連のラストシーンは実に約13分。最終回を担当したチーフ演出・吉田照幸監督に撮影の舞台裏を聞いた。

 <※以下、ネタバレ有>

 大河ドラマ61作目。タイトルの「鎌倉殿」とは、鎌倉幕府将軍のこと。主人公は鎌倉幕府2代執権・北条義時。鎌倉幕府初代将軍・源頼朝にすべてを学び、武士の世を盤石にした男。野心とは無縁だった若者は、いかにして武士の頂点に上り詰めたのか。三谷氏は2004年「新選組!」、16年「真田丸」に続く6年ぶり3作目の大河脚本。小栗は大河出演8作目にして初主演に挑んだ。

 大河ドラマ61作目。タイトルの「鎌倉殿」とは、鎌倉幕府将軍のこと。主人公は鎌倉幕府2代執権・北条義時。鎌倉幕府初代将軍・源頼朝にすべてを学び、武士の世を盤石にした男。野心とは無縁だった若者は、いかにして武士の頂点に上り詰めたのか。三谷氏は2004年「新選組!」、16年「真田丸」に続く6年ぶり3作目の大河脚本。小栗は大河出演8作目にして初主演に挑んだ。

 最終回は「報いの時」。北条義時(小栗)は北条泰時(坂口健太郎)を鎌倉方の総大将に据え、朝廷との“最終決戦”「承久の乱」(1221年、承久3年)に勝利。後鳥羽上皇(尾上松也)を隠岐島へ流罪とし、泰時と北条時房(瀬戸康史)を六波羅探題として京に留めた。

 3年後、義時は不意に昏倒。京の知り合いが送ってきたという「薬草を煎じたもの」を、のえ(菊地凛子)に勧められて飲むが、体調は次第に悪化。医者(康すおん)によれば、毒を盛られたという。義時が問い詰めると、のえはあっさり白状。「私に頼まれ、毒を手に入れてくださったのは、あなたの無二の友、三浦平六殿ね」――。

 政子(小池栄子)が見舞いに訪れた。時の流れを振り返る2人。

 政子「たまに考えるの。この先の人はわたくしたちのことをどう思うのか。あなたは上皇様を島流しにした大悪人。わたくしは身内を追いやって、尼将軍に上り詰めた稀代の悪女」

 義時「それにしても、血が流れすぎました。頼朝様が亡くなってから、何人が死んでいったか。梶原殿、全成殿、比企殿、仁田殿、頼家様、畠山重忠、稲毛殿、平賀殿、和田殿、仲章殿、実朝様、公暁殿、時元殿。これだけで13。そりゃ、顔も悪くなる」

 義時は嘘をついていた2代鎌倉殿・源頼家(金子大地)の死の真相を政子に打ち明けた。

 この日、ひどく体調が芳しくない義時は、毒消し薬を取ってほしいと頼む。「私にはまだやらねばらぬことがある。隠岐の上皇様の血を引く帝が、返り咲こうとしている。何とかしなくては」「まだ手を汚すつもりですか」「この世の怒りと呪いをすべて抱えて、私は地獄へ持っていく。太郎のためです。私の名が汚れる分だけ、北条泰時の名が輝く」「そんなことしなくても、太郎はきちんと新しい鎌倉をつくってくれるわ」「薬を」「わたくしたちは、長く生きすぎたのかもしれない」。政子は小さな瓶を逆さにし、薬を床にこぼす。「姉上…」「寂しい思いはさせません。わたくしもそう遠くないうちにそちらへ行きます」「私は、まだ死ねん!」。義時は最後の力を振り絞って立ち上がるが、バランスを崩して倒れ込む。

 「まだ!」。薬を舐めようと床を這いつくばるが、それも政子が袖で拭いてしまう。「太郎は賢い子。頼家様やあなたができなかったことを、あの子が成し遂げてくれます」。悶え苦しみ、息も絶え絶えの義時。「北条泰時を信じましょう。賢い八重さんの息子」「確かに…、あれを見ていると…、八重を…思い出すことが…」「でもね、もっと似ている人がいます。あなたよ」「姉上…あれを…太郎に…」。義時が指さし、部屋の隅にあるのは、源頼朝(大泉洋)の形見の小さな観音像(髻観音)――。

 政子「(髻観音を手に、義時に一歩近寄り)必ず渡します」

 義時「姉上…」

 政子「ご苦労さまでした…小四郎」

 政子はさらに近寄り、弟の顔に手をやった。義時は静かに息を引き取る。政子の嗚咽だけが聞こえる。

 最終回の撮影を振り返り、吉田監督は開口一番、「すべてのシーンが濃密なので、むちゃくちゃ疲れましたね。最終回の撮影何日か目に、流石の小栗さんも『疲れました』と。そう口にされたのは、1年5カ月の撮影で初めてでした」。ラストシーンは約3時間の収録。「この現場はクランクインから、ほとんど巻いて終わっていたんですけど、最後は1時間ぐらい押したんじゃないですかね。悔いがないように多めに撮っていたこともありますが、役者も僕もスタッフも何となく終わりたくない、そんな雰囲気に包まれていました」。物語の濃度が頂点に達した最終回。ラストシーンは義時と政子に収斂した。

 「台本の最後の2行ですよね。義時がどんな気持ちで『姉上』と言ったのか、政子がどんな気持ちで『ご苦労さま』と言ったのか。撮影前に小栗さんと小池さんから質問も受けましたし、撮影の段取り中も話し合っていました。義時の気持ちは『感謝』なのか、『どうして(薬を取ってくれない)?という問い掛け』なのか。政子は『ねぎらい』なのか、『安らかに』なのか。でも結局、ここまで長いドラマにになると、その瞬間に出た感情でしかないんですよね。長きにわたって義時と政子の人生を演じてきた2人がどんな感情に到達するのか見たい。始まりから『衝動』を大事にしてきました。クランクアップの次の日、小栗さんが『(撮影のことは)全部忘れました』とおっしゃっていました。演じた時の感情がどんなものだったのか、終わった後にも分からない。その場で生まれたものでしかないから。それこそが役になり切っているということだと思います」

 「このシーンはほぼ台詞のみです。立ち上がったり、離れたり、寄り添ったりする動きは現場で作っていきました。最後の最後、政子は当初、離れたままで、孤独に義時が死んでいくイメージでした。しかし始まってみると、政子は寄り添いました。終わった後、小池さんは『気持ちが抑えられなかった』と申し訳なさそうにおっしゃいました。とんでもない。これこそが『鎌倉殿』の描いてきた家族の物語にふさわしい最後。愛と憎しみ、残酷さと優しさの交錯するとても深い表現となりました。これはもう、お二人の力。僕がただの観客と化していました」

 最終回は、のえの鬼神のような姿、義村のブレない人間性、義時から受け継がれた泰時の傑出した純粋な心、りく、後鳥羽上皇、文覚、時房…すべての登場人物に血が通って躍動。三谷作品の真骨頂の極みだった。

 キャストも交えた最初の全体ミーティング。吉田監督の第一声は「これまでの大河は重厚なクラシック音楽です。今回の『鎌倉殿』はジャズです。ジャズのセッションのようにそれぞれが刺激し合い、セッションの中で新しい大河を作っていきたい」という内容。「それを最後までキャスト・スタッフが全うしてくれたことが、今までの大河とは違う何かを生んだんじゃないかと思います」と感謝の言葉で締めくくった。三谷氏の最高の脚本、演者とスタッフの挑戦心が最高の作品として結実した。

 ◇吉田 照幸(よしだ・てるゆき)1993年、NHK入局。広島放送局などを経て、2004年、ドラマ形式のコント番組「サラリーマンNEO」を企画・演出。シリーズ化・映画化の大ヒットとなった。朝ドラは13年前期「あまちゃん」で初演出、20年前期「エール」でチーフ演出・共同脚本を務めた。他の代表作にコント番組「となりのシムラ」「志村けん in 探偵佐平60歳」、ドラマ「獄門島」「悪魔が来りて笛を吹く」「八つ墓村」、映画「探偵はBARにいる3」など。大河ドラマに携わるのも時代劇も今回が初。「鎌倉殿の13人」は全48回のうち、最多17回を担当した。

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