【何かが起こるセンバツ記念大会(9)】3校目のセンバツ連覇に挑んだ大阪桐蔭“史上最強世代”

[ 2023年3月21日 08:10 ]

大阪桐蔭の連覇を報じる2018年4月5日付スポニチ紙面
Photo By スポニチ

 熱戦が繰り広げられている第95回選抜高校野球大会。今大会は5年ごとに開催される「記念大会」。一般出場枠が4枠増え36校出場の大会となる。過去の記念大会では後にプロ野球で活躍するレジェンドたちが躍動し、史上初の完全試合が達成されるなど数々のドラマが演じられてきた。「何かが起こるセンバツ記念大会」第9回は2018年の大阪桐蔭・根尾昂、藤原恭太。

~2人のドラ1候補 史上3校目の春連覇へ大勝発進~

 強い、強すぎる。2018年第90回選抜高校野球記念大会第4日、前年のセンバツ覇者・大阪桐蔭が登場するとあって甲子園は4万5000人の大観衆で埋まった。2人のドラフト1位候補を中心とした強力打線を擁する大阪桐蔭が21世紀枠で選出された初出場の伊万里(佐賀)に襲いかかった。初回、遊撃手と投手を兼ねる“二刀流”根尾昂(現中日)が左中間へ適時三塁打。2回には4番に入った藤原恭大(現ロッテ)が右前打。4回までに先発全員安打、根尾、藤原も2安打ずつを放って12点を奪った。20安打14点の大勝で1929、30年の第一神港商(後の市神港)、81、82年のPL学園(大阪)以来、史上3校目の“春連覇”に向け盤石のスタートを切った。この年のセンバツまで春夏連覇を達成したのは12年の大阪桐蔭をはじめ7校。夏春連覇は83年の池田をなど4校。夏連覇は3連覇の中京商(現中京大中京)を含めて6校。過去に2校しか達成していない“春連覇”は最も難しいといわれていた。

~前年は履正社との大阪決勝 藤原1発 根尾胴上げ投手~

 この大会の大阪桐蔭は“最強世代”と称されていた。根尾は中学3年時にはMAX146キロを記録。岐阜・古川中2年時には全国中学校スキー大会の回転競技で優勝するなど類い希な身体能力で「スーパー中学生」として注目されていた逸材だった。藤原も地元大阪「枚方ボーイズ」時代から俊足強打の外野手として高校球界から熱い視線を送られていた。2人は大阪桐蔭入学後、16年夏の大阪大会に1年生でそろってベンチ入り。藤原は2回戦東戦に「7番・中堅」で先発出場。2点適時打を含む2安打で高校公式戦デビューを飾っている。大阪大会は3回戦で敗退したが、新チームとなった同年秋の近畿大会大阪府予選から根尾と藤原はチームをけん引した。大阪府予選準決勝で履正社に敗退。近畿本大会では4強まで進み、センバツ当確ランプを灯したものの優勝は履正社にさらわれている。

 年が明けてセンバツ出場が正式決定。“最強世代”の甲子園ストーリーが始まった。ベンチ入り登録18人中7人が根尾ら新2年生。柿木蓮(現日本ハム)横川凱(現巨人)もいた。宇部鴻城(山口)との1回戦。スタメンの6番までの5選手が新2年生。初回1番に入った藤原の左中間二塁打を足場に好機を築くと5番・遊撃で先発した根尾が2点適時打。6番の2年生・山田健太の2ランなどで圧勝した。2回戦は聖地初先発の根尾が4番手として登板。粘る静岡を振り切った。準々決勝は東海大福岡、準決勝は秀岳館(熊本)に競り勝った。決勝の相手は前年秋の大阪府予選で負けた履正社。史上初の「大阪決戦」となった。初回、藤原が右翼へ先制ソロ。6回にも右中間へ中押しの1発を放った。同点とされた直後の9回は5得点。最後は根尾が登板。無失点で胴上げ投手となった。

 春夏連覇を目指した夏は3回戦で2年生の柿木が仙台育英(宮城)に無念の逆転サヨナラ負け。“最強世代”が新3年生となる2018年の記念大会は大阪桐蔭にとって夏のリベンジとセンバツ連覇が宿命づけられた“絶対に負けられない春”だった。

~藤原サヨナラ打で王手 根尾魂の140球 2年連続胴上げ投手~

 初戦(2回戦)で伊万里を打撃で圧倒した大阪桐蔭。3回戦は投手として甲子園初先発の根尾が明秀日立(茨城)を抑え込んだ。11奪三振の完投勝利。5回の第3打席で適時打を放つなど“二刀流”の独壇場だった。準々決勝は花巻東(岩手)。2012年藤浪晋太郎(現アスレチックス)と大谷翔平(現エンゼルス)がセンバツ初戦で対決して以来の顔合わせとなったが、大阪桐蔭打線が爆発。藤原が4打点、根尾が3打点…19得点。投げては柿木と横川、森本昴佑の完封リレーで4強に進んだ。三重との準決勝は苦しんだ。柿木が4回を投げ2失点。5回からは根尾が救援。三重打線を「0」に封じ込めるが味方打線が三重の背番「10」定本拓真を打ち崩せない。9回粘って同点とし延長へ。この大会から導入されたタイブレーク突入寸前の12回2死一塁。藤原が左中間を割る会心のサヨナラ打。ついに平成の時代、どこも成し遂げていない“春連覇”に王手をかけた。

 智弁和歌山との決勝マウンドに立ったのは根尾だった。三重戦の救援に続く、自身初の連投。4回表に2点を先制されたが、その裏同点としてもらうと7回、宮崎仁斗の左前適時打で勝ち越し。8回には藤原が4点目となる左越え二塁打。根尾も左前適時打で続いた。140球目。帽子を飛ばす、こん身の137キロ直球で一ゴロに仕留めゲームセット。入学時から切磋琢磨してきた“最強世代”の仲間とつかんだ史上3校目の春連覇。根尾は2年連続の胴上げ投手となった。

~春夏連覇も 2年間3度の聖地Vは史上初の大偉業~

 最強世代のドラマは終わらない。その夏、大阪桐蔭は大阪学院大高を撃破。北大阪大会を制し、第100回全国高等学校野球選手権記念大会の切符をつかんだ。大阪桐蔭として2012年以来、8年ぶりの春夏連覇への挑戦。“最強世代”は根尾、藤原を中心に進撃した。1回戦で2年前の甲子園覇者・作新学院(栃木)を破ると2回戦、沖学園(南福岡)戦では根尾、藤原が甲子園初のアベック弾。3回戦は高岡商(富山)に逆転勝ちした。準々決勝では浦和学院(南埼玉)相手に藤原が2発5打点、根尾も大会2号を放つなど11点の大勝。準決勝は済美(愛媛)に打ち勝ち“王手”をかけた。

 決勝の相手はエース吉田輝星の熱投と逆転サヨナラ2ランスクイズなどで勝ち上がってきた秋田の雄、金足農。注目度は最高潮に達していた。大阪桐蔭は初回から疲労が隠せない吉田に襲いかかり3点。5回には根尾が吉田から大会3号2ランを放ちKOした。13得点の圧勝で春夏連覇の偉業を成し遂げた。17年の春から18年夏まで3度の甲子園制覇。過去、2年間4度ある甲子園で3度頂点に上り詰めた例はない。根尾と藤原は4度の大会全試合に出場した。根尾は70打数26安打3本塁打20打点、5勝。藤原は85打数27安打5本塁打21打点。圧倒的な数字を残し、甲子園を“卒業”。盟友はドラフトで1位指名を受けプロの道に進んだ。“最強世代”の偉業から5年。第95回記念大会で後輩たちが史上4度目の“春連覇”に挑戦する。(構成 浅古 正則)

※学校名、選手名、役職などは当時。敬称略

続きを表示

2023年3月21日のニュース