大阪桐蔭・前田「緊張もなく、応援歌を口ずさむ余裕もあった」連覇へ14K完投発進

[ 2023年3月21日 05:20 ]

第95回選抜高校野球大会第3日・2回戦   大阪桐蔭3―1敦賀気比 ( 2023年3月20日    甲子園 )

<大阪桐蔭・敦賀気比>14奪三振の力投を見せた大阪桐蔭・前田(撮影・須田 麻祐子)
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 2回戦3試合が行われ、昨年覇者の大阪桐蔭は3―1で敦賀気比(福井)に勝利。今秋ドラフト1位候補の最速148キロ左腕・前田悠伍(3年)が今大会初の2桁となる14三振を奪い、1失点で完投勝利を挙げた。14奪三振は昨春準々決勝・市和歌山(和歌山)戦の12奪三振を更新する自己最多。史上初となる2度目の選抜連覇へ好発進を決めた。

 選抜連覇に挑む大阪桐蔭の春は、前田の奪三振ショーで幕が開けた。毎回奪三振と14奪三振はともに、昨春に大垣日大(岐阜)・五島幹士が只見(福島)戦で18三振を奪って以来。「速球と緩急をうまく使えて三振を取れました」。直球の大半を130キロ台に抑えて、力を入れるのは要所だけ。得点圏に走者を背負った9打席で無安打5奪三振と勝負どころがよく分かっていた。

 「後半勝負で徐々に力を入れていこうと思っていました」

 狙い通りに終盤でギアを上げた。3―1の8回1死から連打で一、二塁を招いても、「自分のペースで投げられていたので、焦ってはいけないと思っていた」。6番・友田泰成を変化球3球で空振り三振に仕留めると、続く野道諒彌には1ボールから4球連続の直球で三ゴロ。3者凡退は7、9回の2イニングのみながら危なげなかった。

 「相手の応援を自分の応援だと捉えて凄く楽しく投げられた。去年の経験が凄く大きいのだなと感じました」

 昨夏の甲子園準々決勝・下関国際(山口)戦で敗戦投手となって以来の聖地だった。敗戦後、周囲に漏らした。「逆転されて周りの音が一切聞こえなくなった」。その一戦では、1点優勢の9回に逆転打を献上。鉄仮面が心の中で聖地の魔物にのみ込まれていたのだ。

 今春選抜のベンチ入り選手が決まった日、背番号を与えられた18人を集めた。「甲子園は、強い精神で戦わないとやられてしまうぞ」。観客全員が敵に見えたと振り返る昨夏の経験をナインに熱く伝えた。それは主将としての成長でもあった。

 新チーム結成後、主将の適任者を選ぶ選手間投票では前田に票が入らなかったという。それでも、主将に任命された。豊富な経験を期待されての抜てき。その思惑通り、昨夏の経験をチームに還元し、試合前には「全力疾走や声をしっかり出せば、ペースは乱されないから」と鼓舞した。

 「緊張もなく、応援歌を口ずさむ余裕もあった。これを続けたいです」。前田は、たくましさを増して聖地に帰ってきた。(河合 洋介)

 ◇前田 悠伍(まえだ・ゆうご)2005年(平17)8月4日生まれ、滋賀県長浜市出身の17歳。古保利小2年から高月野球スポーツ少年団で野球を始め、6年時にオリックスJr選出。高月中では湖北ボーイズに所属。1年時にカル・リプケン12歳以下世界少年野球日本代表として世界一。大阪桐蔭では1年秋からベンチ入りし、2年秋からエース。2年時の春夏に甲子園出場で春優勝。50メートル走6秒5、遠投110メートル。1メートル80、78キロ。左投げ左打ち。

 ○…大阪桐蔭・前田が毎回の14奪三振をマークした。選抜の毎回奪三振での完投勝利は昨年の大垣日大・五島幹士が只見戦で記録して以来。大阪桐蔭では春夏通じて初めてとなった。また、前田は昨年の選抜でも2桁奪三振を2度記録しており、個人3度目。大阪桐蔭の甲子園最多は辻内崇伸、藤浪晋太郎の4度であと1と迫った。なお、前田は選抜では昨年から22イニング連続奪三振中。今大会でどこまで記録を伸ばすことができるか。

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2023年3月21日のニュース