【内田雅也の追球】“爆発的作戦”で今季マツダで初勝利 阪神・熊谷の見事なバスター・エンドラン

[ 2022年7月20日 08:00 ]

セ・リーグ   阪神3-0広島 ( 2022年7月19日    マツダ )

<広・神>3回、バスター・エンドランでチャンスを広げた熊谷(撮影・坂田 高浩)
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 バントの構えからバットを引いて強打する「バスター」は和製英語だ。米国では見たままの「フェイク(見せかけ)バント」で、その後の打ち方から「スラッグ(殴りつける)バント」「スラッシュ(切りつける)バント」などと呼ぶ。

 3回表無死一塁。阪神は見事なバスター・エンドランで好機を広げ、追加点を奪った。今季3敗と苦手だった床田寛樹から2勝目をもぎ取った。

 打者は5月10日以来、今季7試合目スタメン抜てきの熊谷敬宥だった。初球、バントの構えから内角ボール球を見送った。2球目、一塁走者・中野拓夢がスタート。バントの構えからバットを引き、高めツーシームをたたいた。三塁頭上をライナーで破る左翼線安打となり、中野は快走、ヘッドスライディングで三塁を奪ったのだった。

 熊谷のスイングはまさにバスター本来の表現「殴りつける」「切りつける」形だった。これがライナーを生んだ。

 走者の背中(右方向)に打つような姿勢でもなかった。V9巨人の指南書でもあったアル・カンパニス『ドジャースの戦法』(ベースボール・マガジン社)にもヒットエンドランは<特別な場所に打とうとするな、と教えている>とある。

 なぜ日本ではバスターと呼ぶようになったのだろうか。「バスタード(粗悪品)バント」など諸説あるが、個人的には「バースト(破裂する、爆発する)」から派生した説がしっくりする。静かにバントするのではなく、ドーンと爆発的な攻撃になりえるわけだ。

 この無死一、三塁から近本光司の投ゴロの間に三塁走者が生還する。この時も一塁走者・熊谷がスタートしていた。近本は内角高めボールぎみの直球を転がしており、ヒットエンドラン(三塁走者ゴロゴー)ではないか。積極的な作戦で機動力を絡め、攻めたてた。

 熊谷のほか北條史也、陽川尚将のスタメン抜てき組が皆、結果を出した。復帰の大山悠輔や途中出場の小幡竜平も安打を放った。作戦も継投策も決まった。全員が働いて今季過去6戦未勝利だったマツダで初勝利を記した。監督・矢野燿大にはもちろん会心だろう。

 開幕2戦目(3月26日)以来の借金2。さあ、球宴までの5割復帰が見えてきた。 =敬称略= (編集委員)

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2022年7月20日のニュース