JR東日本東北・鈴木 天国の親友に贈るアーチ!12点快勝に貢献

[ 2022年7月20日 04:30 ]

第93回都市対抗野球1回戦   JR東日本東北12―1NTT西日本 ( 2022年7月19日    東京D )

<JR東日本東北・NTT西日本>6回、勝ち越し2ランを放ち、ガッツポーズするJR東日本東北・鈴木(撮影・木村 揚輔)
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 1回戦3試合が行われ、JR東日本東北(仙台市)はNTT西日本(大阪市)に12―1の8回コールドで大勝した。鈴木聖歩(せいふ)外野手(25)が6回に決勝2ランを放つなど2安打4打点。生前に相手チームでプレーしていた大学時代のチームメートをしのぶ始球式が行われた一戦で躍動した。昨年準優勝のHonda熊本(大津町)は鷺宮製作所(東京都)に快勝し、2回戦へ駒を進めた。

 天国の親友へ届けとばかりに、鈴木がバットを振り抜いた。1―1の6回2死一塁、カウント2―1からの直球を逆方向の左中間席へ勝ち越し2ラン。2年連続の初戦突破に導き、昨年の2回戦でサヨナラ勝ちした相手を再び倒した。

 「何かの縁ですかね。言葉になりません」。ヒーローは特別な決勝弾を振り返った。試合前。NTT西日本で遊撃手としてプレーしていた20年4月、骨肉腫で急逝した中井諒さん(享年23)の両親による始球式が行われた。桐蔭横浜大で同期だった鈴木は、打者役を両親に志願。「まさか実現するとは…。あれが一番緊張しました」と振り返った。

 運命の対戦が決まった時、大学の仲間からLINEで「勝ち負け以上に中井と野球を楽しめよ」などと多くのメッセージが多数寄せられた。中井さんの母・啓子さん(54)からは冗談交じりに「(試合で)手加減してね」と耳打ちされていたが、真剣勝負で大活躍し「打っちゃいました」と苦笑いした。

 昨年の開幕試合Honda戦でも決勝アーチを放った鈴木の試合を決める一発。西村亮監督は、この日が48歳のバースデーで「鈴木が均衡を破る打撃をしてくれた。選手から最高の誕生日プレゼントをもらいました」と目を細めた。

 スタンドには鈴木の妻と生まれたばかりの長男が観戦し、「活躍した姿を見せられたかな」と鈴木。19年、NTT西日本のルーキーとして東京ドームでプレーした中井さんの思いも背負い、完全燃焼する。(伊藤 幸男)

 ◇鈴木 聖歩(すずき・せいふ)1997年(平9)2月26日生まれ、宮城県出身の25歳。東北高では甲子園出場なし。桐蔭横浜大では1年春にデビュー。昨年の都市対抗Honda戦で決勝アーチを放った。父・浩一さんは東北高で甲子園に2度出場し、76年の明治神宮大会で1試合5盗塁のタイ記録。1メートル72、77キロ。右投げ左打ち。

 《中井さんの母・啓子さん「感謝」の始球式》中井さんの母・啓子さんは、生前に息子がつけた背番号「6」のユニホームを着て始球式を務めた。父・康浩さん(54)は「ドームは諒の聖地。諒が守っていたショートからの景色を見たい」と遊撃のポジションに就いた。打席に立った鈴木は、啓子さんが投じた球を、康浩さんに向かって打ち返した。啓子さんは「感謝を込めて投げました」、康浩さんが「球場のにおいを感じられた」と感無量の面持ちだった。

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