須崎 一度は自力での五輪出場断たれ…吉村コーチの言葉が救いに、金に抱き合って涙

[ 2021年8月8日 00:10 ]

東京五輪第16日 レスリング ( 2021年8月7日    幕張メッセ )

金メダルを手に笑顔の須崎(AP)
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 女子50キロ級決勝は17、18年世界女王の須崎優衣(22=早大)が孫亜楠(28=中国)をテクニカルフォールで下し、金メダルを獲得した。日本選手団旗手の大役を任された初五輪で、女子最軽量級3大会連続となる頂点の座を守った。男子フリースタイル65キロ級の乙黒拓斗(22=自衛隊)も金メダルを獲得。日本勢は過去最多の64年東京大会に並ぶ金メダル5個を達成した。

 東京開催が決まった13年の「東京で金」という誓いを実現した。決勝までの3試合と同様、バックを取って磨き上げたローリングで一気に加点。1分36秒で勝負をつけると、両拳を握った。中学から指導を受けるJOCエリートアカデミーの吉村祥子コーチと抱き合うと、涙があふれた。「本当に諦めかけた夢の舞台だった。今の私があるのは支えてくれた方々のおかげ。感謝の気持ちでいっぱい」。

 一度は自力での五輪出場の可能性が断たれた。東京五輪につながる19年世界選手権の代表決定プレーオフで宿敵の入江ゆき(28)に敗戦。「これから何のために生きれば良いのか」と涙に暮れた。「人生のどん底」にいる須崎を救ったのが、吉村コーチの「0・01%しかないかもしれない。でもゼロじゃない」という言葉。自身を奮い立たせ、3日後にはマットに立った。そして、わずかだった可能性は現実となる。入江が世界選手権で五輪切符を逃して代表選考が振り出しに戻り、19年12月の全日本選手権の再戦で雪辱して五輪への道をつないだ。

 セコンドを務めた吉村コーチは教え子の金メダルに「ホッとしたのが正直なところ」と涙を浮かべた。中学2年で親元を離れてJOCエリートアカデミー入りした当時を思い返し、「五輪で金メダルを獲るという強い思いを人一倍持ってきた。かなえてあげたい思いだった。目標を達成できて、家族の思いを考えるとこみ上げてくるものがある」と感慨深げ。まだ22歳で次世代を担う立場に「これが終わりじゃなくてスタート。2人ではこれが第1章ということで、良い人生を自分で歩いて行ってくれると思うので。そこでサポートできるならするし、一人で歩けるなら歩かせたい」と期待の言葉とエールを送った。

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