あん馬・萱が日本勢17年ぶり銅 秘密兵器のF難度投入「本当にやりきった。自分を褒めたい」

[ 2021年8月2日 05:30 ]

東京五輪第10日 体操男子種目別決勝 ( 2021年8月1日    有明体操競技場 )

<体操男子種目別あん馬決勝>銅メダルを手にする萱(撮影・会津 智海)
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 種目別決勝のあん馬で、萱(かや)和磨(24=セントラルスポーツ)が14・900点をマークし、銅メダルを獲得した。日本勢の同種目の表彰台は04年アテネの鹿島丈博の銅以来、4大会、17年ぶり。13年世界王者の亀山耕平(32=徳洲会)は14・600点で5位で、マックス・ウィットロック(28=英国)が15・583点で連覇を達成した。

 夢舞台のラスト演技を終え、力強く拳を握った。銀メダルを獲得した団体総合でチーム主将を務めた萱が、この日は個人種目で闘志全開だ。予選は難度を示すDスコア6・4点の構成で7位通過だったが、一発勝負の決勝はF難度の「ブスナリ」を投入。「秘密兵器だった」と言うDスコア6・6点の構成を完遂した。

 「諦めなければ絶対に何かが起こると思っていた。悔しいというより、本当にやりきった。今日は自分を褒めたい」

 今では感情表現豊かな24歳だが、小さな頃は気弱で内気だった。サッカーではボールが自分の方に来ると逃げ出し、野球は一日で辞めたこともある。そんな萱が、体操に出合ったのは04年アテネ五輪。団体総合金を決めた冨田洋之の“栄光の架け橋”をテレビで見て、「これ、やりたい!」と体操を始めた。あれから17年。アテネの鹿島以来となる種目別あん馬の表彰台に立った。

 16年リオデジャネイロ五輪は補欠でチームに同行。団体世界一をスタンドで見届け、無数のフラッシュを浴びて凱旋したメンバーとは別に、ひっそりと帰国した。あの時の悔しさを晴らす一心で豊富な練習をこなし、自国開催の夢舞台に立った。安定感抜群の演技が持ち味の萱は、その過程でいつしか“失敗しない男”と呼ばれるように。「そう言われたいと思って体操をやっているわけじゃない」と言うものの、今大会の計11演技で大きなミスは一つもなかった。

 小学校の卒業文集に「オリンピックで金メダルをとりたい」と書いた。東京五輪では団体銀、あん馬で銅。届かなかった黄金の輝きを求め、24年パリ五輪へ歩みを進める。「今日の銅メダルは、パリに向けてのスタートだと思っている。やっぱり、金メダルを獲りたい。今すぐにでも、練習したい」。満足感と無縁の24歳に、休息なんて必要ない。これからの3年を、フルスロットルで駆け抜ける。

 【萱 和磨(かや・かずま)】

 ☆生まれとサイズ 1996年(平8)11月19日生まれ、千葉県出身の24歳。1メートル63、53キロ。

 ☆名前の由来 調和が取れて自分を磨いてほしい、という願いが込められている。

 ☆体操歴 小学2年で体操を始め、習志野高から順大に進学。現在はセントラルスポーツ所属。東京五輪をともに戦った谷川航、今年6月に現役を引退した白井健三さんと同学年。

 ☆主な実績 初代表だった15年世界選手権の団体総合で金メダル、種目別あん馬で銅メダル。18、19年世界選手権の団体総合で銅メダルを獲得した。

 ☆験担ぎ 憧れの冨田洋之が試合前にうなぎを食べていたことを知り、かつて萱も試合前にうなぎを食べていた。母・恵子さんは「国産で家計直撃でした」と苦笑い。

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