【柔道】岩崎恭子さん 混合種目は「多様性と調和」考えるきっかけに、五輪を問題提起の場に

[ 2021年8月2日 09:00 ]

<東京五輪柔道混合団体準々決勝 日本・ドイツ>重量級の選手たちの巻き返しで逆転で準決勝進出を決め、笑顔の(左から)向、素根、ウルフ(撮影・北條 貴史)
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 【メダリストは見た 岩崎恭子さん】男女合わせて史上最多9個の金メダルを獲得した日本柔道は、最後の最後に新種目の混合団体でフランスにまさかの敗北を喫した。14歳で出場した92年バルセロナ五輪の競泳女子200メートル平泳ぎで見事に金メダルを獲得した岩崎恭子さん(43)は、「柔道発祥国」として常に世界一の期待を背負わされる選手たちに思いを寄せるとともに、各競技で新たに採用された混合種目を「多様性と調和」について考えるきっかけにしてほしいと望んだ。

 銀メダルは日本チームの皆さんにとっては残念な結果だったかもしれません。柔道は日本が発祥ですし、しかも混合の団体は今回が初めてなので、絶対に勝ちたかったと思います。でも、オリンピックで決勝戦まで進んだのですから、それだけで十分に素晴らしいことなのではないでしょうか。

 個人では男女合わせて9個も金メダルを獲得しました。日本選手団がこんなに早く史上最多の金メダルを手にすることができたのは、柔道の皆さんが頑張ってくださったからです。銀メダルでも胸を張ってください。そして3年後のパリでぜひリベンジしてほしいと思います。

 私は92年のバルセロナ五輪で金メダルを獲りましたが、大会前には全く注目されていなくて、プレッシャーや邪念は全くありませんでした。でも次のアトランタ五輪は大会前から注目されて、結局100、200メートルとも決勝に残ることができませんでした。その時に一番感じたのは「注目される中でメダルを獲れる選手はどれだけ強いんだろう」ということでした。心技体の全てが備わっていないと重圧を乗り越えて栄冠を手にすることはできないんです。日本が発祥ということで常に周りから金メダルを求められる柔道はそれだけで大変だと思いますし、その中で9個も金メダルを獲ったのですから本当に凄いことだと思います。

 今回の五輪では水泳や柔道、卓球など、混合種目が一気に増えました。国際オリンピック委員会(IOC)が推進したとのことですが、オリンピックは男女平等やジェンダーについて考える機会を与えてくれる場でもあると思うのです。私が現役だった頃は、まだ女子選手の出場者数は少なかったですし、それがおかしいとも思いませんでした。実は柔道の女子が正式種目になったのは92年バルセロナ五輪からなんです。

 男子と女子が違うのは当たり前で、だから別々に競技をしています。でもそれは「区別」であって、「差別」は絶対にあってはいけない。大事なのはそこだと思います。私も現役の頃は、アジア人だということで差別されたこともあります。でも、水泳をやって海外に行くようになって、日本という国はどれだけ幸せなんだろうと思うようになりました。オリンピックの選手村では、自分の国に帰るよりずっとここにいた方が幸せだからという外国の選手にも会いました。オリンピックに行ったからこそグローバルな視点で物事を考えられるようになったし、ぜひ皆さんもオリンピックをいろいろな問題について考えるきっかけにしてもらえればと思います。

 混合種目ではありませんが、新種目であるスケートボードでは13歳の西矢椛さんが金メダルを獲得し、あちこちで「記録が抜かれて残念だったね」と言われるようになりました。でも、タイムもそうですが、記録は誰かに抜かれた方がうれしいものです。西矢さんだけでなく、水泳でも今回は10代の選手が頑張りました。私もそうでしたが、やっている本人は年齢なんて全然気にしていないんです。スタート台に立てば勝負に年齢は関係ないですから。ただ、バルセロナの時の私が「椛ちゃんに似ているね」と言ってくださる人もいて、「私も中学生の頃はあんなに可愛かったのかな」なんて思っちゃいました。あの頃は背負っているものが何もなかったので、今映像を見直しても恥ずかしいぐらい屈託なく笑っていますね。柔道の選手たちは背負うものがたくさんあり大変だと思いますが、これからも負けずに頑張ってください。私も応援しています。

 ◇岩崎 恭子(いわさき・きょうこ)1978年(昭53)7月21日生まれ、静岡県沼津市出身の43歳。日大三島―日大。92年バルセロナ五輪で200メートル平泳ぎに出場し、競泳史上最年少金メダリストに。96年アトランタ五輪にも出場し、98年に現役引退。02年にはJOC海外指導者研修で留学を経験。JOCでは事業広報専門委員などを歴任した。現在は日本水泳連盟で競泳委員を務めている。

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