藤井王将 AI極める!“人間が考えない”手学ぶ…王将戦第2局で導き出された第一候補「次はその手を」

[ 2023年3月26日 05:05 ]

王将の駒を大切に持ち、青野九段(右)と記念撮影に臨む藤井王将(撮影・河野 光希)
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 将棋の第72期ALSOK杯王将戦(スポーツニッポン新聞社、毎日新聞社主催)7番勝負で初防衛を果たした藤井聡太王将(20)=竜王、王位、叡王、棋王、棋聖含む6冠=が25日、人工知能(AI)同化への意欲を静かにたぎらせた。

 この日は第7局開催予定地の栃木県大田原市・ホテル花月で行われた指導対局、トークイベントに参加。前夜の祝勝会と合わせ、2日間の務めを終えた藤井王将は「多くの方に来場いただき、歓迎されたことをうれしく思います」と振り返った。トークイベントでは第7局正立会予定の青野照市九段(70)から「常にAIと同じ手を指そうとしている」と指摘され、言い得て妙といった表情を浮かべた。

 奨励会三段時代からソフトでの研究を始めた藤井は現在もAIでの棋譜分析を欠かさない。今シリーズでも象徴的な場面があった。第2局の終盤で攻めを優先し、結果的に羽生善治九段(52)の逃げ切り勝ちを許した局面で、AIは△4一飛と打ち込んで受ける意外な一手を第一候補に提示。感想戦では否定的な見解だったが、自宅に戻って調べると有力手だったことが判明したという。

 「粘るだけの手ならば評価できませんが、その後、タイミング良く攻撃に移る筋もあった。次に同じ局面になったら(迷わず)その手を選びます」

 羽生をはじめ多くの棋士が「人間はまず考えない」と切り捨てたAI新手を「有力であれば今後も拾っていきたい」と前向きに捉えた藤井。指摘された「AI同化」を極限まで追究しようとする姿勢には空恐ろしさがある。4月5日開幕の名人戦、同11日開幕の叡王戦では深層学習を極めた驚愕(きょうがく)の一手が飛び出すかもしれない。 (我満 晴朗)

 ≪小中高生12人と同時対局≫トークイベントに先立って行われた指導対局では地元の小中高生12人と「プロになってから5回目くらい」という多面指しをこなした。アマ三段の実力を持つ高校生からは駒落ちのない平手で果敢に挑まれ「さすがに勝とうと思った(笑い)」と本気モードになる場面も。結果は青野九段との指し継ぎで時間切れに終わったが「凄くしっかり指される方でした」と感心していた。

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