神奈月 あふれる武藤敬司LOVE「プロレスが大好きなんですよ」「暗い感情よりすげえなと」<一問一答>

[ 2023年2月22日 05:00 ]

武藤敬司LOVEを貫く神奈月。Tシャツもシブい(撮影・西尾 大助)
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 プロレスラー武藤敬司(60)の引退を受け、武藤のものまねで知られるタレントの神奈月(57)がねぎらいの言葉を贈った。ものまね歴は23年に及び、プライベートでも一緒に食事に行く親しい間柄。スポニチ本紙の取材にその天才ぶりや人柄、リングから下りた素顔を明かした。

 ――武藤さんの魅力は。
 「自分が大好きな自由人。普通だとあんまり考えられないけど、いろんな団体を渡り歩いている。あんなにいろんなところをトップレスラーとして渡り歩いている人は他にいない。自分をどこに置いたら価値があるのかを常に分かっていて動ける人。普通はそれだとわがままだなって思われるけど、武藤さんは憎めない性格。みんなに愛される。“もう武藤さんだからしょうがないよ”って周りが納得しちゃう。納得させるだけの実績も出しているし、武藤敬司というブランドを築き上げた人」。

 ――人間としての魅力は。
 「人間としても凄い。常にプロレスの発展のことを考えているし、僕らにもどうしたらいいと思う?って聞きます。本当にプロレスが好きなんだなと思う。プロレスが天職だと思う」。

 ――武藤さんのプロレスのどんなところに魅了されたか。
 「身体能力が高い人なので、現実離れした技を決める。“そんな技ができるんだ”っていう開発能力がある。ファンを納得させちゃう。だからみんな魅了される。でも猪木さんみたいなカリスマ的な感じではない。猪木さんは“キングオブスポーツ”でプロレスが一番強いんだというところでやっていた人で、武藤さんは“魅せるプロレス”。猪木さんの流れを継いではいるけど、全然違うアメリカプロレス。楽しませるプロレス。魅せ方がうまい。センスというか。普通、デビューしてからファンが納得して安心して期待して見られるまで10年かかる。武藤さんはデビューしてちょっとで魅せるプロレス、ファンを納得させるプロレスをやっていた。天才と言われるのはそういうところだと思う」。

 ――ベストバウトは。
 「ベストバウドは95年10月9日の高田延彦戦。不思議と勝つ試合よりも負けた試合が印象に残る。武藤さんは試合を作品と呼んでいる。自分が勝つとか負けるじゃなくて、いい試合ができた時に“あれはいい作品だな”って言う。勝ち負けにはこだわっていない。勝ち負けじゃなくエンターテイメントとして、お客さんが満足して帰ってもらえる試合だったか、武藤敬司としてしっかり爪痕を残したか。ベストバウトは高田戦だけど、“そこでその技出すか”みたいな断片的な思い出がいろいろある」。

 ――高田延彦戦戦ではどんなところに魅了されたか。
 「最後、ドラゴンスクリューから足4の字固めという古典的な技で終わらせた。それでフィニッシュなんだって裏切られた感じがした。今まで武藤さんがやってきた試合とはかけ離れた試合。ムーンサルトプレスとか派手な技を使っていた武藤さんが、古い昔の昭和のプロレスで使っていた技を取り入れて勝った。プロレスファンは凄く納得したし、いい意味での裏切りだった」。

 ――好きな技は。
 「シャイニング・ウィザードは普通は相手が膝をついているところで相手の膝に乗って自分の膝を顔に当てる技。それをレフリーの人がしゃがんだ瞬間、レフリーの人の背中を踏み台にしてシャイニング・ウィザードを決めた。レフリーまで使っちゃう。そういうことが起こった瞬間に、こんなことできるんだって感じる。ドラゴンスクリューという足にかける技を中邑真輔に対して首にやったこともあった。あんなの今まで見たことない。そういう技を生み出していっていたから、同じようなマンネリ化の試合じゃなくて、ファンは魅了されていく。ほかの選手では見られないプロレス」。

 ――一緒にリングに上がったことも。
 「全日本プロレスの時のファン感謝デーという大会で一緒に上がった。武藤さんが上がってくれと言ってくれた。こういうとこもエンターテイメントとして取り入れちゃう。お客さんを楽しませるために、芸人とプロレスラーが組んでやった」。

 ――親交のきっかけは。
 「ものまねがきっかけでものまね番組で共演した。そこから親交がある」。

 ――引退について何か話したか。
 「引退は聞いていない。引退を発表してから何回かは会ったし、プライベートでも食事をしたけど、それについては話していない」。

 ――普段はどんな人。
 「面白い人。めちゃめちゃ面白い人。冗談を言う。出してくるワードが面白い。機転が利く人だからこっちが思っているより先のことを言って笑わせてくる。失礼なことも言う。アメリカ人っぽい。日本人だと忖度するけど、忖度しないで思ったことをなんでも言う。長州さんは大先輩で普通は怖いはずなのに、長州さんにタメ口を使ったりしちゃう。そういうことができるのはこの人のキャラクター。それでも憎まれないで愛される。“しょうがないか武藤さんだから”って」。

 ――親交を深める中で知った意外な一面。
 「昔はものすごくかっこいいレスラー。飛んだり跳ねたりするし、ロングタイツじゃなくてオレンジ色とかのショートタイツを履いていた。女性人気も高かった。自分でも“俺ジャニーズ系だった”ってよく言っている。ナルシストなところがある。だから、ものまねをしているからといって気安く近づくなよってタイプの人だと思っていた。でも意外にも武藤さんの方から歩み寄ってくれた。俺を使ってウケようとしたり。俺をリングに上げたり。そういうところは意外でした。モノマネって大体やられると嫌なんですよ。特にレスラーの人は勝手にやる分にはいいけど、こっちに来るなみたいなのがあったんですけど、武藤さんは現役バリバリのころからウェルカムウェルカムって考える人だった。一緒にリングに上がらせてもらえるなんて思わなかった。付き合っていろんな話をしていくと、グローバルな人だなと思った。どんな材料でも取り入れちゃう。根っからのエンターテイナー。試合を見ていてもただ戦うだけじゃなくて、視線とか目配せとか全部お客さんを見ながらやっている。お客さんを楽しませる。どうやったら自分がかっこよく見えるか、どうやったらお客さんが楽しんでくれるかが分かっている人。プロレスが大好きなんですよ」。

 ――海外でも人気に。
 「あの時代に日本人レスラーがアメリカで成功することはなかった。日本人が和服を着て悪役やってアメリカの選手にボコボコにされるみたいなことはあったけど、武藤はトップレスラーだった。ヒールはヒール、悪者は悪者だけど、海外でトップレスラーにまでなっちゃう日本人はいなかった。ハルクホーガンとか世界のトップレスラーとも戦っているし、日本のトップレスラーとも戦っている。世界的に凄い」。

 ――武藤敬司としてもグレート・ムタとしても活躍
 「武藤さんは身体能力が高かった。顔にペイント塗っているのも受け入れられた時代。ただこれは武藤敬司じゃない。魔界にいる武藤とは別の人」。

 ――YouTubeチャンネル「神奈月のカンチャンネル」の登録者が100万人を超えたらグレート・ムタが登場すると公約していたが。
 「ムタはもう引退しちゃったので、呼べるのかどうなのか。100万人いったらお願いしたいですけどね。武藤さんに頼んで魔界に連絡してもらわないといけない(笑い)。武藤さんが魔界に連絡するのを面倒くさがったらできない」。

 ――けがに苦しみながらもここまで現役を続けた。
 「パフォーマンスとして膝を痛めたらパフォーマンスは落ちる。でも膝を痛めたから新しい技に切り替えていくというのが凄い。ドロップキックを相手の膝をめがけてやるようになった。そこまでの跳躍力がなくてもできる。“低空ドロップキック”っていう名前がついた。けがをしたことで新しい技ができる。創作意欲があるから、常に新しいものを生み出している。痛めていることをファンも知っていて見ているので、大丈夫かな?とさらに感情移入ができる。やるかやらないかその辺の駆け引き」。

 ――武藤さんの引退に改めて思うこと。
 「けががある中でここまでこれたのはもの凄い。武藤という商品価値を落とさないままここまできたのは本当に凄い。もう試合が見れないのかという暗い感情は出てこない。寂しさというよりもここまですげえなって気持ち。1995年に高田延彦さんと東京ドームでやって、今は2023年。20年以上年経っているのに、東京ドームで引退試合をやる。東京ドームで引退試合は猪木さんくらい。東京ドームでプロレスやっても興行的に成り立たない時代がずっと続いている中で、自分の引退試合をやること自体が凄い」。

 ――武藤さんにメッセージ。
 「とりあえず体を治してもらいたい。武藤さんが面白い人だとは僕は知っているから、これからは僕と一緒にメディアの方に進出してもらって、武藤さんの面白さを世間の人に知ってほしい。武藤さんのかっこよさはプロレスで十分伝わっているので、これからは面白い武藤として僕と一緒に歩んでいきましょう」。

 ――今後もものまねを続けるか。
 「武藤さん引退したからってものまねをやらないという訳ではない。逆に武藤が見たければ僕のショーを見てくれ。ただ僕も2年もすると還暦ですから、どこまで動けるか。動けるうちはやります」。


 ◇神奈月(かんなづき) 1965年(昭40)11月3日生まれ、岐阜県出身の57歳。87年にデビュー。95年の日本テレビ「ものまねバトル」で注目を浴びる。主なものまねレパートリーに長州力、長嶋茂雄、原辰徳、井上陽水など。

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