阪神・近本 走攻守に完成度高いスーパールーキー

[ 2019年8月9日 08:00 ]

阪神の近本
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 【宮入徹の記録の風景】 魅力あふれるプレーヤーだ。阪神の新人・近本はここまで103試合に出場し416打数118安打、打率・284、9本塁打、33打点、23盗塁。既に安打は100本を超え、最終163安打ペースと快調に積み上げている。新人のシーズン最多安打は56年佐々木信也(高橋)の180安打。以下、48年笠原和夫(南海)160安打、17年源田(西武)155安打、58年長嶋茂雄(巨人)153安打と150安打以上は4人だけ。近本が史上5人目になる可能性は高く、16年高山の球団記録136安打、さらには長嶋の持つセ・リーグ記録の更新も射程に捉える。

同様に本塁打は最終12本、盗塁は31盗塁に届く計算。過去に新人で150安打、10本塁打、30盗塁をクリアしたのは58年長嶋が153安打、29本塁打、37盗塁でマークしたのが唯一の記録。近本が達成すれば61年ぶり2人目の快挙になる。

 さらに打撃成績の主要部門以外にも近本の非凡なセンスがうかがえる。デビュー以来458打席に立っているが、ここまで併殺打は0。今季両リーグの規定打席以上の打者で併殺打がないのは近本しかいない。2リーグ制後、規定打席に達し併殺打が0は16年西川(日本ハム)まで12人。うち新人ではチームの先輩の坪井智哉が98年に455打席0で記録しただけ。このまま併殺打なしで終われば近本は2人目になる。

 俊足ぶりは内野安打の多さにも表われる。近本の内野安打はリーグ最多の25本。2位の大島(中日=22本)と3本差をつけている。新人がいきなり最多内野安打を記録したのは過去65年さかのぼっても58年本屋敷錦吾(阪急)45本、68年高田繁(巨人)24本、17年京田(中日)39本とわずか3人。相手内野陣を混乱に陥れる走力はチームにとって大きな武器といえるだろう。

 守備に目を転じると、外野補殺がリーグ1位の9。2位の青木(ヤ)が6補殺だから抜かれることはまずなさそう。新人の外野手最多補殺は65年井石礼司(東京)15補殺、98年高橋由伸(巨人)12補殺と2人しかいない。近本が史上3人目、球団では初めてになりそうだ。ところで、近本は左投げ。過去に阪神の左投げの外野手でシーズン最多補殺を記録したのは62年並木輝男15補殺、99年坪井智哉11補殺の2人だけ。左腕からのレーザービームは希少価値であることが分かる。プロ野球全体でも左投げ外野手のシーズン最多補殺は05年稲葉篤紀(日本ハム=14補殺)を最後にいない。最多回数は江尻亮(大洋)、門田博光(南海)、佐々木誠(南海、ダイエー)の3度。今後、近本の送球でどれだけ相手走者の進塁を防ぐだろうか。

 そういえば、近本はプロデビューとなった開幕の3月29日ヤクルト戦(京セラドーム大阪)で早くも外野補殺を記録している。近本は1番中堅で先発出場。初回表無死一、二塁の場面で山田哲の中前安打を拾うと素早く本塁に送球し二塁走者の坂口をアウトに。ヤクルトの先制点を阻止した。50年に始ったセ・リーグの開幕戦全試合のスコアカードを見ても、初回最初のアウトが外野の直接送球による補殺となったのは初めて。こんな前代未聞の珍事をやってのけるあたり、運の強さも併せ持っている。8月は打率・448と絶好調。シーズン終盤のパフォーマンスが楽しみだ。(敬称略)

 ◇宮入 徹(みやいり・とおる)1958年、東京都生まれ。同志社大卒。スポニチ入社以来、プロ野球記録担当一筋。94年から15年まで記録課長。

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2019年8月9日のニュース