【元NHKアナ小野塚康之の一喜一憂】馬淵史郎監督のメッセージ

[ 2019年8月9日 05:30 ]

第101回全国高校野球選手権 第3日1回戦   明徳義塾6―4藤蔭 ( 2019年8月8日    甲子園 )

<藤蔭・明徳義塾>ベンチで指揮を取る明徳義塾・馬淵監督(撮影・後藤 正志)
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 今大会最年長63歳と最若手26歳、百戦錬磨の明徳義塾と機動力駆使、ダイナミックなイケイケ野球の藤蔭・竹下大雅監督の対戦。明徳義塾・馬淵史郎監督の「野球観」が後輩指導者にも伝わる試合ではないかと私には思えた。

 「何年たっても何も変わりませんよ。高校野球の指導も甲子園の戦い方も!」

 何度も何度も聞いて来た基本的な考え方。ならば思い切って馬淵さんの心の声を読み取って試合を楽しんでみたい。もうすでに馬淵節が私の耳に聞こえてくる。私の“勝手に想像・馬淵劇場”にお付き合いいただきたい。

 9回裏2死一、二塁、同点になるランナーを置きながら最後の打者のショートゴロを手慣れた作業で二塁フォースアウトにし、試合終了。6対4で収めた明徳義塾の勝利は点差よりも余裕のあるものに見えた。

 大勢の記者に囲まれ、額から流れ落ちる汗を真っ白なタオルで拭いながら初戦の心構えを理路整然と語る、甲子園の大御所・馬淵監督。夏20回目の出場で初戦の勝率は驚くほど高い。藤蔭との戦い方を聞かれたが、今日も特別なことは何も言わない。

 まとめると「守りのミスは禁物。積極的な姿勢を持ちつつ強引な打撃や攻撃はしない。チャンスがやってきたら得点できるケースを作る。投手交代は早めに。あとは甲子園という場と、ここに来るチームの力の恐ろしさを肝に銘じる事。そしてそれを実践するために過ごしてきた日々の生活から生まれる生徒たちとの信頼感」。何度目の出場であろうが、チーム力に違いがあろうが、どんな難敵であろうが「馬淵野球論」は変わらない。日焼けした表情に今回も自信があふれる。

【1回の攻防】明徳義塾の攻撃、左飛、遊飛、右飛三者凡退。

 「一巡目はさ、打って行かないと。データは入ってるし映像も見てるけどタイミングは打席に立ってみんと分からんもんね。選球しながら振って行く。これでいいのよ。あとの打者、次の打席に生きるから」

 明徳義塾・林田大成投手(3年)の立ち上がり、三振、遊ゴロ、右飛。

 「先頭出したら乗るチームだからね。いきなり全部いいもん出さんとね。手探りなんてダメ。林田は最初から全球種コントロール出来てたでしょ。昨日の調子と甲子園っていう舞台でも大丈夫なハートだから指名したのよ」

【2回の守り】先頭が右前安打で出塁、次打者二ゴロ併殺。

 「ノーアウトでヒット打たれたとこでけん制しなかったでしょ。あれね。投げたらタイミング図られるでしょ。打者に対する間合いだけ変えたらランナーは動けず、打者もこらえきれず、打ってくれたよね。セカンドの正面でゲッツーでしょ。最良の結果だったね。機動力のチームだから初めにけん制のタイミングとか情報やりたくなかったからね。手の内見せずアドバンテージ取れたよね」

【4回の攻撃】1死一塁、一走スタート、次打者・奥野翔琉外野手(2年)の右越え3塁打で先制、1―0

 「試合が膠着(こうちゃく)してたし打ててなかったからねぇ。ヒットエンドランかけたのよ。相手のコントロール良かったし、奥野は県大会でも当たってたし、この試合でも積極的に行って欲しかったから。チェンジアップだったんだけど、ベンチで彼には“それもあるよ”ってささやいといたからね。しかも相手の得意の戦術をこっちが先に使って藤蔭の勢い止めてやろうかとも思ってたんよ。先取りは利くからね」

 このあと今釘内野手(2年)にも中前適時打が出て2―0

【6回の攻撃】死球、犠打、三失(3―0) 右前適時打(4―0) エンドラン中前打一、三塁、四球満塁、右犠飛(5―0) 中前適時打(6―0) 右飛

 「死球はもらったランナー。2―0とリードしてるし、バントでいいんだけど、完全な“送り”じゃもったいないよね。セーフティー気味にいけば“もしかすると”ってのもあるし、奥野も分かっているからアウトだけど、いいバントだったね。その後で相手のエラーでしょ。それも送球ミスだから二つ塁をもらえたからね。甲子園は広いし、進塁権が与えられるゾーンが結構あるから絶対ダメだよね。それでここだと思って、もう1回エンドランかけた。決まって、そのあとつながったしね。選手みんなが意図を理解した、いい攻撃だった」

【6回の守り】好投の林田が6安打1四球で4失点。山田圭祐(3年)にリレーして後続を断つ。(6―4)

 「継投で行こうと思ってたけど、林田が「0」で来てたからね。6点取ってたし。山田の準備はしてたけど、相手の攻撃が速かったから、ちょっと危なかった。直前の攻撃で林田は四球で出塁して、結構、長く塁上にいてこの暑さだから。これから先は暑さをもっと意識しておかないとね。山田が抑えてくれたのと、サードゴロを正本旭内野手(3年)が難しいバウンドで捕球して、送球の体制に入るのが楽じゃなかったけど、いい送球してくれたからね。あれはファインプレーだね」

【9回の守り】相手は7番から。継投3人目に左腕・新地智也(2年)

 「最後は新地でと思った。山田は前のイニングも良かったけど、最終回は絶対に四球のランナーだけは出したくなかったから。1、2番は左だったしね。新地は抑えると信じてた。上手く継投できました」

 馬淵史郎監督はバランスの良い指導をされていて、決して偏ったり特別なことはしていない。もちろん体力強化などには新しいことも取り入れていらっしゃるが、高校生の出来る事、甲子園ですべきことを貫いているのだと感じる。最後に強調するが、馬淵さんが語って下さったのはごく一部だ。長く出場されてきた中で私も相当、色々教えて頂いた気になっている。今回は私の理解とイメージで馬淵さんに語らせてしまい申し訳ないが、高校野球を理解し、楽しむ上で私の相当なベースになっているのは間違いない。お許しいただきながらお読みいただければありがたい。

 ◆小野塚 康之(おのづか やすゆき)元NHKアナウンサー。1957年(昭32)5月23日、東京都出身の62歳。学習院大から80年にNHK入局。東京アナウンス室、大阪局、福岡局などに勤務。野球実況一筋30数年。甲子園での高校野球は春夏通じて300試合以上実況。プロ野球、オリンピックは夏冬あわせ5回の現地実況。2019年にNHKを退局し、フリーアナウンサーに。(小野塚氏の塚は正しくは旧字体)

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