国学院久我山 甲子園初勝利を後押しした応援団も“セーフ”

[ 2019年8月9日 09:15 ]

<国学院久我山・前橋育英>国学院久我山の勝利に盛り上がるアルプススタンド(撮影・木村 揚輔)
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 阪神電車の甲子園駅で下車して、甲子園へ。球場手前で阪神高速の高架をくぐることになる。夏の甲子園大会開催期間、たくさんの高校が、この高架下を応援団の集合場所に使用する。

 大会3日目だった8日。この高架下で携帯電話を握り、気をやきもきさせている人物を取材した。28年ぶりの出場を果たした国学院久我山(西東京)の野球部特別顧問でもある佐藤誠博教頭だ。同校はこの日の試合に際し、応援団の応援ツアーを組んだ。一般生徒、OB、学校周辺地域の住人が対象。バス計21台、新幹線では約700人。その他にもツアー以外で現地に赴いた人々を含め、最終的にアルプスには約2800人が集まった。

 バスでのツアーは前日に京都で1泊する日程と、車中泊による0泊3日の超強行軍の2種類。だが、一方がトラブルに巻き込まれた。事故渋滞により、大幅な時間のロスが発生。0泊3日組は渋滞に捕まらなかったが、ブラスバンドや応援リーダを乗せた京都1泊組の方が大幅に到着が遅れた。直前の第2試合が6回を迎えた頃。高架下で佐藤教頭は「あと20キロくらいのところまで来ているけど、たぶん間に合わない。最初はブラスバンドなしになるかもしれない…」と頭を抱えていた。

 待ちわびる時間の中で、同校OBの日本ハム・矢野謙次チーム統轄本部特命コーチ(38)の話題になった。記者が巨人担当時代に、取材していたことを告げるとスマートフォンを取り出し、LINEでの矢野コーチとのやり取りを見せてくれた。「矢野とは大の仲良しでね。テキサスで凄く喜んでくれているんだよ」と焦っていた表情から笑顔に変わった。矢野コーチは今年3回目のレンジャーズへのコーチ留学の米国滞在のため、7月28日に渡米。一方で甲子園出場を果たした後輩へ、Tシャツを送る気遣いも忘れなかった。矢野コーチだけでなく、ロッテ・井口監督、西武・秋元バッテリーコーチら、同校OBからは久しぶりの出場を祝い、続々と差し入れが届いた。

 幸いにも第2試合が終盤にもつれ、試合時間が延びた。遅れていたブラスバンドらを乗せたバスも、試合開始の20分ほど前に到着。前橋育英応援団とのエール交換はかなわなかったが、初回から熱のこもった応援が三塁アルプスから響いた。

 応援団の後押しもあり、同校は見事に春夏通じ甲子園初勝利。試合後に再び高架下に戻り、野球部の保護者の方々を取材した。実は、記者の娘がこの4月から国学院久我山中に入学。そのことをカミングアウトすると「どうぞ持って行って」と大応援団がこの日、手にしていた甲子園出場記念の真っ赤なタオルをいただいた。高校球児でもあった記者の母校が、甲子園初出場を果たした十数年前。運よくアマチュア野球担当として、甲子園での母校の試合を取材した当時の気持ちを少し、思い出した。

 佐藤教頭には「娘をよろしくお願いします」と頭を下げた。職権乱用かな?すみません。あ、矢野コーチ。娘が後輩になりました。この場を借りてご報告。テキサスからの声援はしっかり届いていますよ…。(記者コラム・春川 英樹)

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2019年8月9日のニュース