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【全国ジャケ食いグルメ図鑑】佐賀県唐津市 モダンじゃないけど“玉らない”「ポツンと一店舗」

[ 2019年6月21日 12:00 ]

おとぎ話に出てきそうな外観
Photo By スポニチ

 佐賀県の唐津線に「岩屋」という無人駅がある。単線の、田舎の駅だ。駅前には商店街も何もない。そこから歩いて10分ぐらいのところに、昔からやってるシブいお好み焼き屋があると聞いた。

 直感で、いいジャケット(店構え)をしているんじゃないだろうか?と思い、ネットも何も調べないで、聞いたままに、道に迷いながらその店にたどり着いた。

 おお!これか!想像以上に素晴らしい。住宅地にポツンと一軒。このフォルム、店のシルエット、おとぎ話に出てきそうだ。開け放った入り口の引き戸、紺の暖簾(のれん)、鉢植え、全体の色味、看板の位置、5月だったので小さな鯉のぼり。どこを取っても文句のつけようなし。一目惚(ぼ)れだ。これを「ジャケ喰(ぐ)い」コレクションに加えずどうする。

 「山口お好み屋」。店名がいい。お好み焼き屋をショートカットして、お好み屋。たまらないセンス。

 入り口脇に立てかけてある木の板には「お好み焼き山口」。すでに骨董(こっとう)品のごとし。

 しかしお昼前だというのに、客が外までわんさかいる。これは並ぶことになるか、と思いきや、意外にすんなり座れた。多くの客は、店内で食べず、お持ち帰りなのだった。地方っぽい。

 店内がまた最高。昭和30年代で時間が止まったままのようだ。クラッとくる。

 お好み焼き台は2つ。男性店員と女性店員がそれぞれ焼いている。客はそこを囲んで座る。つまりここは、自分で焼く店ではなく、店員さんの焼いたものが提供されるスタイル。モノグサで、焼くのが下手なボクはありがたい。他に座敷とテーブル席もあるが、鉄板前が特等席だ。

 缶ビールを頼み、飲みながらメニューを見る。ボクは焼きそば好きだから、それは絶対食べたい。でもお好み焼きも食べたい。と思ったら、うれしいことに「おこのみ小」がある。しかも150円!大でも200円という驚異の安さ。

 「文化焼」は焼きそばの入ったお好み焼き、そこに卵が入ると「文玉」。いいなぁ。「ミックス」はそばとうどんが両方入っているものだ。

 外気が流れ込む店内で、目の前でおじちゃんがチャッチャと作っていくのを見ながら、ビールを飲むシアワセ。夢のようだ。

 山盛り作って、4つに分けた焼きそばの一山が、コテでシューッと、ボクの前に寄せられた時の、こみ上げる嬉(うれ)しさ。ソースの香りにググーッと腹が減る。うまい!麺がチャンポンぽい太麺の九州スタイル。フォークで食べるというのも楽しい。

 そしてそして、2つに折られた可愛いお好み焼き!シンプルで、軽くて、めっちゃくちゃオイシイ。大人のオヤツ感覚にシビれた。総合的に、近年入った店でも最強の一軒。


 ◆山口お好み屋 お好み小150円、お好み大200円、焼きそば300円。佐賀県唐津市厳木町岩屋1077。JR唐津線岩屋駅から徒歩14分。(電)0955(63)2766。営業時間は午前10時~午後7時。月曜定休。テークアウト可。

 ◇久住 昌之(くすみ・まさゆき)1958年、東京都生まれ。漫画家、漫画原作者、ミュージシャン。81年、和泉晴紀とのコンビ「泉昌之」として月刊ガロにおいて「夜行」でデビュー。94年に始まった谷口ジローさんとの「孤独のグルメ」はドラマ化され、新シリーズが始まるたびに話題に。舞台のモデルとなった店に巡礼に訪れるファンが後を絶たない。フランス、イタリアなどでも翻訳出版されている。

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