×

旅・グルメ・健康

【生島ヒロシ オヤジの処方箋】水虫は寝たきりの入り口

[ 2019年6月26日 12:00 ]

生島ヒロシ
Photo By スポニチ

 芸能界一、健康に詳しいアナウンサー生島ヒロシ(68)が、シニアに向けて元気に生きる方法を指南する連載「誰も教えてくれなかった“老いるショック”脱出術 オヤジの処方箋」。今回は国民病ともいわれる「水虫」です。70歳代は6割がかかっているというデータもあります。しかも水虫があると、高齢者は歩行に支障が出て転倒しやすい。骨折して寝たきりになるリスクまであるのです。

 皆さん、こんにちは。生島ヒロシです。梅雨本番。そう水虫の季節です。潜在的患者まで入れると3000万人。なんと日本国民の4人に1人が水虫といわれています。

 私も水虫でした。TBSのアナウンサー時代。いわゆる「爪水虫」というやつ。爪が分厚く変形する、あれです。右足の親指、中指、小指にできました。温泉リポートとかやってて、こっちの温泉からあっちの温泉へ、濡れた足も拭かずに靴を履いてかけずり回っていたのが原因だったのかなと思ってます。皮膚科で処方してもらった飲み薬で治りました。飲み薬だけで治るんだって、非常に驚いたのを覚えてます。

 水虫なんて命に関わる病気じゃない。よくいわれますね。でも待ってください。実は水虫は寝たきり、要介護の入り口なんです。

 早稲田大学スポーツ科学学術院の中村好男教授らによる研究データがあります。中村教授が1万581人の男女を調査したところ、足の指や爪に水虫がある高齢者が過去1年間に転倒した割合は、水虫でない人と比べて高いという結果が出たのです。図<1>を見てください。転倒して大腿骨でも折ったら、寝たきりで介護が必要になることも考えられるんです。

 今回お話をうかがった順天堂大学医学部付属順天堂医院・形成外科の先任准教授、田中里佳先生も、水虫の高齢者は歩行に支障を来し転倒のリスクがあると指摘しています。たかが水虫、されど水虫ですね。

 【原因】専門用語では「足白癬(はくせん)」と言います。カビの一種、白癬菌が皮膚に付着し、角層細胞にあるケラチンというタンパク質をエサに増殖。角質層の奥深くまで入り込むと免疫細胞が反応し、かゆみや水ぶくれになります。特に高齢者は加齢で皮膚が硬く、厚くなることから白癬菌が棲みやすくなるのです。犬や猫の毛に寄生する白癬菌もいます。ペットが感染源になることもあるのです。

 【検査】水虫かな?と思ったら皮膚科です。皮膚の角質を採取し顕微鏡で観察。感染しているかどうか診断されます。水虫と間違えやすい皮膚疾患もあることから、場合によっては菌の遺伝子検査も行われます。

 【治療】爪水虫がない場合は塗り薬です。見た目が改善されてもまだ菌がいるので、数週間は塗り続けることが大切。医者が菌がいなくなったことを確認するまでです。

 爪水虫は内服薬。3~6カ月の服用が必要。副作用が出る場合もあるので、肝臓と血液の検査が行われます。爪水虫は塗り薬では治らないといわれてきましたが、最近では効果が高い新薬が出回っています。

 【予防法】白癬菌は高温多湿な場所が大好き。だからジメジメさせないこと。私は爪水虫にかかってからは5本指ソックスを愛用してます。特に足先だけの短いタイプ。上から普通のソックスをはけば、見た目も問題なしです。あと保湿クリームも塗ってますよ。かかとがカサカサしないように。田中先生も「乾燥すると皮膚のバリアーがなくなり菌が入りやすくなる」と注意を促しています。

 高齢者に水虫が多いのは、お風呂に入る回数が減ってくることとも関係があるようです。白癬菌は皮膚に付いてから12~24時間で感染に至る、といわれています。だから1日1回お風呂に入って、足を洗えば予防が可能。図<2>を見てください。洗って、しっかり拭いて乾燥。そしてクリームを塗って、5本指ソックス。このサイクルどうですか?

 高齢者は体が硬くなるので、お風呂に入っても足まで手が届かず洗えない、ということもあるようです。家族の協力も必要です。

 それにしても爪水虫は怖いですね。爪が変形すると歩く時に親指に力が入らず、バランスを崩して転倒するんですって。糖尿病で免疫力が落ちていれば、さらに注意しないと。爪が食い込んで傷になって、そこから雑菌が入る。壊死(えし)して、切断なんてことも。田中先生は、70歳以上の20~30%は足に血流障害があると指摘しています。この人たちが水虫になると、血が流れにくい、つまり栄養分が運ばれないため治りにくく悪化する。特に爪水虫は、爪のすぐ下にある足の指の骨に感染すると骨を溶かす。結果として足の切断が必要になることがあるんですって。足が切断されると1年生存率が50%というデータもあるんですって。

 でも過度に怖がるのはやめましょうよ。とにかく清潔にしておけばいいわけですから。1日1回お風呂に入る。プールやジムなど公共の場所を素足で歩いた後は、足を洗えないならウエットティッシュで拭くだけでも随分違いますよ。靴は数足を順番に履くようにして、日光に当てて殺菌。白癬菌は乾燥に弱いんです。家のバスマットも要注意な感染源。キッチンペーパーで代用してはどうですか?

 実はラジオの女性スタッフから「生島さん、素足奇麗ですね」と言われたことがあるんです。うれしかった~。その日一日楽しかったですね。人から見られることを意識=生きる力、だと思うんです。さあ水虫を治して素足で出かけましょう。今年の夏に間に合わないなら、来年でも!

 ◆生島 ヒロシ(いくしま・ひろし)1950年(昭25)12月24日生まれ、宮城県出身の68歳。米カリフォルニア州立大ロングビーチ校ジャーナリズム科卒業後、76年にTBS入社。89年に退社し、生島企画室を設立。TBSラジオ「生島ヒロシのおはよう定食・一直線」(月~金曜前5・00)は、98年から続く長寿番組。名物コーナー「教えてドクター!病気が逃げてく健康習慣」に登場する名医たちとの親交から、芸能界きっての健康通。

 《日本初「足の疾患センター》順天堂医院に今年4月、足の病気(膝を除く)を専門的に診療する「足の疾患センター」が開設されました。整形外科、形成外科、皮膚科、循環器内科、血管外科などが連動。水虫から下肢静脈瘤(りゅう)、腱しょう炎など足に関連する病気の治療が受けられます。この制度、医療先進国の米国では一般的で「足病医」というお医者さんが足の病気全般を扱っているんですって。足病医は、いわば歯科医と同じような身近な存在だそうです。「足の疾患センター」は日本の大学病院では順天堂医院が初めて。田中先生は、その副センター長も務めています。

続きを表示

この記事のフォト

バックナンバー

もっと見る