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【生島ヒロシ オヤジの処方箋】歯は万人の命!「8020」運動で認知症予防

[ 2021年10月29日 12:00 ]

誤嚥を防ぐ舌のトレーニング
Photo By スポニチ

 芸能界一、健康に詳しいアナウンサー生島ヒロシ(70)が、シニアに向けて元気に生きる方法を指南する連載「誰も教えてくれなかった“老いるショック”脱出術 オヤジの処方箋」。今回は「歯と認知症」について考えます。残存歯の数から噛(か)み合わせ、舌の機能まで、口の中は認知症と深い関係にあるのです。

 皆さん、こんにちは、生島ヒロシです。「芸能人は歯が命」。もう25年も前にはやったCMのフレーズ。芸能人だけじゃありませんよ。歯は万人にとって命。最近、歯が認知症と深く関わっているという話を聞きまして、強くそう思いました。もっと知りたくて、早速テクノポートデンタルクリニック(東京都大田区)院長で日本歯科大学付属病院臨床教授の倉治(くらじ)ななえ先生を訪ねました。

 「厚生労働省研究班が行った研究によると、歯が20本以上ある高齢者と比べると、歯がそれ以下の人、入れ歯を使っていない人は、4年間の認知症発症リスクが1・9倍。何でも噛める高齢者と比べて、あまり噛めない人では1・5倍という結果になっています」

 倉治先生から、いきなり衝撃的な数字が出ました。

 「歯の本数が少ない高齢者は、記憶に関わる海馬、行動を抑制する前頭葉など、脳の容積の一部が減少しているとの報告もあります」とのこと。記憶、行動と認知症に関係する部位ですね。

 「8020運動」って聞いたことありますよね。80歳で20本以上、自分の歯を残そうというもの。これをクリアしている高齢者は、認知症予防も期待できるんですって。

 「口は脳に近いですよね。よく噛むと、脳への血流がよくなるのです」

 なるほど、納得です。噛むと、歯の下にある歯根膜という器官が押され、そこにある血管に圧がかかり、血液を脳へ送り込むんだそうです。ポンプのような役割ですね。ひと噛みで3・5ミリリットルの血液が送られるんですって。

 「きちんと噛めることが大事。歯は1本なくなると、その左右、対になっている歯とその左右の計5本が影響を受けます。総入れ歯になっても、その入れ歯が合っていてしっかり噛めれば、認知症のリスクは少なくなると考えられます」

 虫歯に気をつけなきゃって誰でも思いますよね。でも実は、日本人が歯を失う原因は、20年前は虫歯が1位でしたが、いまは歯周病なんだそうです。

 「歯周病菌は歯周ポケットの深いところで石灰化して、歯石になり、歯を支える歯槽骨を溶かします。歯を失わないために、この歯石を定期的に除去することが大事。歯石は家庭では取り除けません」

 歯周病も、歯を失うということで認知症につながっていくんですね。歯周病菌自体が脳に達することで認知症を引き起こすという研究結果もあるそうです。

 歯の大切さは分かりました。では一歩進めて、口の中全体のことを考えてみましょう。倉治先生が「オーラルフレイル」という言葉で説明してくれました。

 「オーラルフレイルとは、食べこぼしをしたり、むせやすくなったり、滑舌が悪くなったりする口腔(こうくう)内の衰えのことです。食べ物がうまくのみ込めなくなると、誤嚥(ごえん)を招く恐れが出ます。誤嚥性肺炎となれば、寝たきりになって認知症を発症することも考えられます。オーラルフレイルは、認知症への入り口とも言えるのです」とのことです。

 そこで認知症のリスクとなる誤嚥の予防法。倉治先生がクリニックで患者さんに指導している「舌のトレーニング」です。イラストを見てください。皆さん、舌の正しい位置ってご存じですか?あまり意識したことないですよね。実は、上顎に吸盤のようにくっついた状態なんだそうです。舌が上顎に吸い付くようになると、舌の奥が鍛えられる。「むせたり、誤嚥が少なくなるという効果があります。のみ込む力、嚥下(えんげ)機能が向上することで、結果として認知症の予防につながるのです」とのことです。倉治先生は、イラスト(4)のような状態を「24時間、365日キープするのが理想」と患者さんに指導しているそうです。パソコンに向かっている時でも、テレビを見ている時でも、家事の最中でもできます。舌のトレーニング、ぜひチャレンジしましょう。

 ◇生島 ヒロシ(いくしま・ひろし)1950年(昭25)12月24日生まれ、宮城県出身の70歳。米カリフォルニア州立大ロングビーチ校ジャーナリズム科卒業後、76年にTBS入社。89年に退社し、生島企画室を設立。TBSラジオ「生島ヒロシのおはよう定食・一直線」(月~金曜前5・00)は、98年から続く長寿番組。名物コーナー「教えてドクター!病気が逃げてく健康習慣」に登場する名医たちとの親交から、芸能界きっての健康通。

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