このゆびと~まれ

【第110回】大阪府泉南郡岬町・古橋重和教育長インタビュー (最終回)

[ 2022年4月4日 05:00 ]

インタビューに答える古橋教育長(左)と幡氏
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 2020年3月2日に始まった「このゆびと~まれ」は、今回の第110回で一度休止します。

 最終回はスポーツニッポン新聞社大阪本社編集局・幡篤志局次長による岬町・古橋重和教育長のインタビューです。岬町の明るい未来に向け、古橋教育長が今後の方針を示してくれました。

 幡 少子高齢化、過疎化という課題がある岬町ですが、小学校と地域が協力した教育が進んでいると聞いています。岬町の教育についてお聞かせください。

 古橋 私自身も岬町社会福祉協議会にいたことで岬町における福祉行政に携わってきました。岬町では長年、地域の大人と子どもが、ともに学ぶ取り組みとして、「福祉共育(ふくしともいく)」を推進してきました。

 幡 その中でも、深日小学校は地域との交流を授業に取り入れるなどし、住民の方たちとの交流を続けていると聞いています。交流する中で、地域の文化や歴史を学び、町の良さを知り、ここで生活したい、ここに戻ってきたいという思いを持って欲しいという思いからですか。

 古橋 岬町は、進学、就職、結婚という人の動きがある時期に町を出て行く人が多いです。ですから子育てというタイミングで人を呼びたい、戻ってきて欲しいと思いは当然あります。

 幡 人口の減少もあると思いますが、今後、町内の学校が統合される可能性はありますか。

 古橋 岬町は中学校1校、小学校3校の構成です。学校運営が立ち行かなくなるまでは基本的にこの構成を堅持したいと考えています。他の自治体では統廃合という方針が出ていますが、岬町はそういう方針ではありません。「福祉共育」という考え方もあり、地域全体で子どもを育てていくという考えなので、統廃合せずに地域力によって学校を活性化させたいと考えています。また、深日小学校だけではなく、3つの小学校それぞれに特徴があります。国際交流などにも力を入れている学校もあり、それぞれが独自に頑張っています。

 幡 深日小学校では2020年の3月から「このゆびと~まれ」という連載を、スポーツニッポン新聞社のデジタルサイト「スポニチアネックス」の中で続けてきました。今回、古橋教育長のインタビューが第110回目の記事となります。この、深日小学校の取り組みについては、どのようにお考えですか。また、今後どのようにしたらこうした地域連携の活動が継続されるとお考えですか。

 古橋 素晴らしい取り組みだと思います。岬町には多奈川小学校という深日小学校と同じくらいの規模の小学校があるのですが、今まではその地区の方が、地域連携は盛んでした。これまで地域の方々が学校に来るということはあったのですが、深日小学校は地域に出向いていくという機会を多く設けました。子供たちが地域の農業、漁業を見学、体験するなどし、地域とのつながりはさらに深くなったと思います。深日小学校は、そのきっかけを掴んだ段階だと思います。このような授業を今後も継続するには学校長の判断にお任せします。

 幡 学校長の判断で継続は可能なのですか。

 古橋 そうですね。基本的には学校運営は学校長の裁量に任せています。

 幡 これまでの「このゆびと~まれ」の連載の中で印象に残っている話はありますか。

 古橋 二つあります。一つは古墳の話です。深日交流発表会という地域の方を招いた会に、教育委員会生涯学習課の課長が劇で出演していましたね。ああ、そこまで入り込んでいるんだと思いました。あとは梅かな。河野さんのね。伝統行事になりそうですね。
 
 幡 教育長という立場でこれまでどういった形で現場と関わって来られましたか。

 古橋 私は行政の出身ですから教育のことは現場の先生、それに近い形で関わってきた方たちのように詳しくありません。私も就任当初は現場に足を運んでいたのですが、教育長という立場で学校の様子を見に行くと、先生たちが緊張するというか、何を見にきたんだろうと思うらしいんですよね。そんなこともあり、学校現場にはあまり行かないようにしています。実際に学校内での学習方法などは、学校長が学校運営をするようになっていますので。

 幡 私は教科担任制について面白い試みだと思うのですが、教育長はどのようにお考えですか。

 古橋 コロナ禍ということもあるのでしょうが、あまりうまくいっているとは思っていません。先生がコロナで休んだりした時には対応できていないと思いました。

 幡 現場の先生に確認したところ、子どもたちへのアンケート調査では9割以上が教科担任制の授業がわかりやすいという回答があり、担任の先生が休んでも他の教科がカバーできていたといったお話や得意教科を担当することで子どもの学びに広がりが出てきたというお話をうかがいましたが。

 古橋 そうですか。私はあまりそう思っていません。ただ、学校長の裁量でやっていますので。中央教育審議会答申でも議題に出てきていますが、実際に国や府から正式決定している事案でもありません。実際には高学年のみでの導入のようですから。国や府が方針を出していないものを町、教育長という立場で決定はできません。あくまで学校長と、その学校の教員での判断となります。

 幡 新しい学習指導要領では「社会に開かれた教育課程」の実現に向けて、深日小学校の取り組みをどのようにお考えですか。

 古橋 昔から地域に根ざした学校教育は必要と言われています。ですので、岬町も「福祉共育」を推進してきました。国がコミュニティースクールを推進する動きもありますので、そういった流れの中でやることになると思います。

    (終わり)

 【深日(ふけ)】大阪府の最南端、泉南郡岬町にある深日は四国や淡路島への交通の要衝として繁栄した。地区人口は1971年の8059人から、2019年には3766人に減少。深日小学校の児童数も1978年は875人いたが、2019年には74人にまで減少した。大阪市内から電車で約1時間の場所にも、少子高齢化の波が押し寄せている。

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