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【生島ヒロシ オヤジの処方箋】片頭痛持ちの方へ「新薬」3種の救世主

[ 2021年11月26日 17:35 ]

片頭痛の新薬一覧
Photo By スポニチ

 芸能界一、健康に詳しいアナウンサー生島ヒロシ(70)が、シニアに向けて元気に生きる方法を指南する連載「誰も教えてくれなかった“老いるショック”脱出術 オヤジの処方箋」。今回は、全国の頭痛持ちの“救世主”と言われている「片頭痛の新薬」についてです。高い効果が期待できますが、専門医の指導のもとで使用しないと、ほかの重篤な病気を見逃すことにもつながります。

 皆さん、こんにちは、生島ヒロシです。秋も深まって、朝晩と日中の温度差が大きいこの時季、頭痛を訴える人が多いんです。秋雨が降って気圧が低くなると、体がむくんで、脳の血管も広がる。それで片頭痛を起こしやすくなるんですって。片頭痛持ちの人は全国に840万人もいるといわれています。そんな皆さんがいま、熱い視線を注いでいる新薬があるのをご存じですか。日本ではこの4月から使用が始まったんですが、頭痛薬に定番の飲み薬ではないんです。なんと、注射。どんなものなんでしょう。東京女子医科大学の脳神経外科頭痛外来の客員教授、清水俊彦先生にうかがいました。

 「脳の血管の周りには、三叉(さんさ)神経というセンサーの役割をしている神経があります。その神経からCGRPという物質が放出されます。CGRPは血管を拡張させ、炎症を起こす物質。これに反応して脳の血管が膨らみ、神経が圧迫されます。その情報が脳に伝わって、脳が痛みとして認識。これが片頭痛です」

 なるほど。片頭痛は、このCGRPが大きな問題なんですね。

 「片頭痛の治療にはトリプタン製剤という飲み薬が使われますが、これはCGRPの出口をふさぐ効果があります。CGRPは不思議な物質で、頭痛のないときも、いつもチョロチョロと出ています。これを私は“脳の尿漏れ”と言っていますが、この状態で、少し頭が痛いかなと感じて薬を服用する。気がつけば、本格的な片頭痛でもないのに、月に10回も飲んでしまう患者さんもいます」

 頭痛薬を飲み過ぎると、脳が痛みに敏感になって症状が悪化。結果として、片頭痛が大本になっている「薬物乱用頭痛」につながるんだそうです。

 「トリプタン製剤は、時にだるさ、吐き気などの副作用が出る人もいますし、心臓に問題があると服用できません。もうひとつ、脳の興奮を抑えるデパケンという薬も使いますが、こちらも眠気、めまい、食欲増進などが報告されています。副作用を嫌って、服用をやめてしまう患者さんがいるのも事実です」

 新薬には、従来の薬で出ていた副作用がほとんどないんだそうです。それでは新薬について清水先生に解説していただきましょう。

 「現在、エムガルティ、アジョビ、アイモビーグと3種類あります。エムガルティとアジョビは、三叉神経から出てきたCGRPを排除していく作用があります。“脳の尿漏れ”状態で起きる小さな頭痛はほとんど消える。CGRPが大量に出てきたときも半分ぐらいはブロックするので、片頭痛が軽くなります」

 従来の薬のようにCGRPを出ないようにするのではなく、CGRP自体を退治するわけですね。

 「アイモビーグはほかの2種類とメカニズムが違います。CGRPが血管にくっつこうとするときに、血管側にある受け皿を覆って、CGRPを寄せ付けないようにするのです」

 いずれも皮下注射。基本的には毎月1本だそうですが、エムガルティは初回に2本、アジョビは一度に3本打ってもいいんですって。「立ち上がりが早く、打ったその週から効いてきます」とのことです。

 “頭痛の大家”と私も頼っている清水先生が「頭痛治療が大きく変わった」と言うほどの新薬。先生の患者さんも「頭が軽くなった」「人生が一変した」と喜んでいるそうです。

 片頭痛で苦しんできた人には、夢のような新薬。ただし、注意点もあります。

 まず、初診で新薬を打ってもらうことはできません。「三叉神経が感じる痛みを全部取り除いてしまうのは危険です。片頭痛だけでなく、くも膜下出血でも同じような痛みが出ることがあります。MRI(磁気共鳴画像装置)で脳の血管にトラブルがないか、くも膜下出血や脳腫瘍の兆候がないかチェックしてからでないと使えません」とのことです。確かに、頭の痛みは取れても、それが片頭痛の痛みではないかもしれませんからね。

 次に、全国どこの病院でも処方してくれるわけではありません。処方できるのは、日本頭痛学会、日本神経学会、日本脳神経外科学会、日本内科学会(総合内科)の専門医に認定されている医師に限られています。事前にウェブサイトで調べたり、問い合わせをしないといけませんね。

 さらに、価格もネック。「新薬は遺伝子組み換え製剤なので、製造工程が複雑。コストがかかっています」とのこと。エムガルティの場合、薬価は1本4万5165円。保険で3割負担の場合でも1万3550円。エムガルティを初回に2本打ったら2万7100円になります。清水先生によると、3カ月から半年は使い続ける必要があるそうです。

 清水先生はこれまで、約1000人の患者さんに処方したそうです。「いい薬であることは間違いありません。ただし、使い方には慎重にならないといけません。まずは従来の予防療法を行い、発作時にはトリプタン製剤を飲む。それで効果が出ない、薄い場合は、脳の血管に明らかなリスクファクターがないことを確認した上で、この新薬を使うのがいいでしょう」とのことです。

 寝込むほど重症になることもある片頭痛。長年の悩みから解放されるために、一度専門医を訪ねてみてはどうでしょうか。

 ◇生島 ヒロシ(いくしま・ひろし)1950年(昭25)12月24日生まれ、宮城県出身の70歳。米カリフォルニア州立大ロングビーチ校ジャーナリズム科卒業後、76年にTBS入社。89年に退社し、生島企画室を設立。TBSラジオ「生島ヒロシのおはよう定食・一直線」(月~金曜前5・00)は、98年から続く長寿番組。名物コーナー「教えてドクター!病気が逃げてく健康習慣」に登場する名医たちとの親交から、芸能界きっての健康通。

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