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【生島ヒロシ オヤジの処方箋】トリ扱い注意 加熱チキンと!

[ 2019年7月24日 12:00 ]

生島ヒロシ
Photo By スポニチ

 芸能界一、健康に詳しいアナウンサー生島ヒロシ(68)が、シニアに向けて元気に生きる方法を指南する連載「誰も教えてくれなかった“老いるショック”脱出術 オヤジの処方箋」。今回は食中毒の一種「カンピロバクター」です。消費量の多い鶏肉からの感染が多いのが特徴。高齢者は下痢で脱水症状を起こしやすいので要注意です。

 皆さん、こんにちは。生島ヒロシです。お子さんが夏休みに入って家族でバーベキューなんてお宅、多いんじゃないですか?しっかり調理して楽しい時間にしましょう。食中毒には気をつけてね。

 私は一回だけ食中毒になったことがあります。20歳の頃。池袋の寿司店でアルバイトをしていた時です。意地の悪い板前さんがいて、珍しく優しい声で「これ持っていきな」とサバの寿司をくれたんです。そしたらあたっちゃって。サバが少し悪くなってたんだと思います。それ以来“光りもの”が苦手になっちゃいました。

 でも今日は魚ではなく、鶏肉での発生報告が多い「カンピロバクター」です。食中毒というと、まずノロウイルスとかサルモネラ菌とか思い出しますよね。厚生労働省の2016年のデータではカンピロバクターは食中毒の原因で2位。1位のノロウイルスは名前の通り「ウイルス」で、細菌由来の食中毒ではカンピロバクターは断トツ。鶏肉はヘルシーですし食べる機会も多いですから気になります。

 【原因】火が十分に通っていない鶏肉を食べて発症することが多いです。カンピロバクターは牛や豚の腸管にもいますが鶏肉の保菌率が高い。鶏を解体する時に腸内の菌が食肉部分に付いてしまう。流通する生鶏肉の30~60%に付着しているといわれています。ほかの食中毒菌が10万~100万個を摂取しないと発症しないのに対し、カンピロバクターは500~800個程度で発症するケースもあります。カンピロバクターは65度で数分加熱すれば死滅するという検証結果が出ています。生焼け、生煮えの鶏肉が危険なのです。

 生鶏肉を扱った手、包丁にはカンピロバクターが付着していることが考えられます。しっかり洗わずに別の料理をすることで広がっていきます。

 【検査】便から細菌を培養する方法がありますが、病院では医師が問診で過去数日の食事、調理法などを聞いてカンピロバクターと診断します。潜伏期間は2~7日と他の食中毒菌より長め。腸をギュッとつかまれたような激しい腹痛も特徴です。

 【治療】自然治癒が期待できます。ただし医師に相談せずに、むやみに下痢止め薬は使わない。細菌が体内から排出されるのが遅れるからです。脱水症状にならないよう水分は十分に取ります。下痢症状が強い場合は抗生物質が処方されることもあります。

 【予防法】順天堂大学の感染制御科学の堀賢教授が、食中毒に関する「養生訓」を作っています。「生野菜・果物から始め、その後に肉・魚を調理すべし」。そう、この順番なんですよ。

 前述の通り、流通している鶏生肉の30~60%にカンピロバクターがいます。鶏肉を切った包丁、まな板をしっかり除菌せず、サラダを作ったり、果物の皮をむいたりしたらどうなるか。肉類は調理が必要なので先に準備したい気持ちは分かります。でもリスクは避けないと。この順番での調理を肝に銘じましょう。堀先生は「まず生で口に入るものから調理を」と強く勧めています。

 バーベキューなどでは調理器具やスペースも限られますからついつい使い回してしまいそう。でも駄目ですよ。堀先生は包丁やまな板に熱湯をかけて殺菌するのも効果が高いと話してます。お湯なら沸かせますものね。

 さて、いざ調理ですが、中まで十分に火を通す。豚肉はしっかり焼くでしょ?鶏肉も同じです。「タンパク質の色が変わると菌も死ぬ」といわれています。鶏肉は中まで白くなったか確認してくださいね。串に刺して焼いたりすると、串の周りや肉が重なっているところが、まだ赤かったりするんですから。

 万が一、カンピロバクターに感染したら、とにかく脱水症状にならないように注意することです。下痢で水分と一緒に体内の電解質も出て行ってしまいます。水とともに電解質、つまり塩分も補充しないと。堀先生によると、水、お茶、コーヒーなどは電解質が入っていないため、かえって体がダルくなることがあるんですって。スポーツドリンクがいいそうですよ。でもスポーツドリンクの味が苦手というシニアの方もいますよね。そこで堀先生のお薦めは「お茶と梅干し」。飲み慣れたお茶と塩分が取れる梅干し。これなら手軽ですね。

 カンピロバクターについてお話ししてきましたが、過度に恐れるのはやめましょうよ。調理の手順や除菌など、気をつけるべきことを気をつければいいんです。あまり神経質になってはバーベキューも楽しくない。生焼け、生煮えはNGということ。生はビールだけにしましょう。

 《水分出る物は下で保存》堀先生の養生訓の「六」には「水分が滴る物は下に、乾物、調理しないで食べる物ほど上に」「野菜は野菜室に保管すべし」などの補足項目があります。肉汁が出る鶏肉などを冷蔵庫の上の方に置いておくと、汁が垂れてきて、調理せずそのまま食べる物に付いてしまう可能性があるわけです。堀先生のもとには、これらの養生訓を店内に貼った飲食店店主から「衛生的に店を経営できています」と感謝の言葉が届いているそうです。

 《末梢神経攻撃の危険も》カンピロバクターは激しい下痢や腹痛はあるものの死亡例はまれです。ただ、全身に力が入らなくなる「ギラン・バレー症候群」の原因のひとつになっているともいわれています。ギラン・バレー症患者の10~30%が発症前にカンピロバクター感染が見受けられた、というデータがあります。カンピロバクター菌には人間の末梢(まっしょう)神経と似た成分を持つものがあり、カンピロバクターを攻撃するはずの抗体が誤って末梢神経を攻撃してしまいギラン・バレー症になるともいわれています。

 ◆生島 ヒロシ(いくしま・ひろし)1950年(昭25)12月24日生まれ、宮城県出身の68歳。米カリフォルニア州立大ロングビーチ校ジャーナリズム科卒業後、76年にTBS入社。89年に退社し、生島企画室を設立。TBSラジオ「生島ヒロシのおはよう定食・一直線」(月~金曜前5・00)は、98年から続く長寿番組。名物コーナー「教えてドクター!病気が逃げてく健康習慣」に登場する名医たちとの親交から、芸能界きっての健康通。

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