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【だから元気!】北村総一朗 心“踊る”若者の刺“劇”、精神若返る60歳年下劇団員との“正面衝突”

[ 2022年1月7日 05:30 ]

熱く演劇論を語る北村総一朗(撮影・会津 智海)
Photo By スポニチ

 著名人に健康や元気の秘訣(ひけつ)を語ってもらう企画「だから元気!」。今回は名作「踊る大捜査線」シリーズで演じた、警視庁湾岸署の署長役でおなじみの北村総一朗さん(86)。所属する劇団で、60歳以上も離れた若手の劇団員たちと、喜怒哀楽をぶつけ合いながら一つの作品を作ることが、健康につながっています。(構成・桑原 淳)

 僕は「劇団昴」というところにいるんだけど、今は来年の3月に公演する舞台「一枚のハガキ」で演出をさせてもらってる。劇団員は一番年下で21歳くらい。そんな、ひ孫くらいの連中に、容赦なく怒ったりしてますよ。「踊る…」の署長みたいに、のらりくらりしていない。むしろ、いかりや長介さんが演じていた、ベテラン刑事の和久さんに近いね。あれほど口数は少なくないけど。あんまり怒っちゃダメだよなあ。

 舞台は新藤兼人さん原作で、第2次世界大戦での実体験をもとにしたもの。僕は戦中派だから「この作品をやる前に、なぜ戦争が起こったか調べたのか」とか言いたくなる。若い人は面白くないこともあると思いますよ。

 だけど、一堂に会した場で、怒ったり褒めたり笑ったり…気持ちをぶつけ合い、確かめることによって、自分も精神的に若くなる。エネルギーが燃えたぎって、テンションも若いときに戻る。

 役を作るのは真剣勝負。向こうも「何くそ!」とたぎってくれるから侃々諤々(かんかんがくがく)言い合う中で若さが首をもたげてくる。若い人には、こちらにない発想や感性がいっぱいある。打てば響くというか、役者の可能性から何かを引き出せたときの喜びたるや。この年で、年の離れた人と何かができるってありがたい。

 僕、お酒が飲めないから、オフの時に若い人と接することってあまりないのよ。会ってお茶するのが関の山。結局、若い人と何かするという形式が大事なのではなく、一緒に好きなことや、没頭できることを見つけることが重要なんだと思う。

 その上で、この世界での生き延び方みたいなものを、健全に伝えていけたらいいよね。劇団で給料がもらえない素人のような人が、もらえるようになるにはどうすればいいか。人並み以上の努力をするしかないんですが、蓄積してきたものを伝えられたらと思う。

 昔、上京したときは「30歳なんてオッサンだ」と思ってた。45歳で老眼になったとき、初めて老いというものを感じ、人生を考え直した時期がある。2013年には前立腺がんになり、舞台を降板せざるを得なくなった。あと、カテーテルアブレーションという不整脈の手術も受けた。

 大病をして、86歳。「踊る…」で主演した“典型的な暑苦しい若者”織田裕二さんをはじめ、たくさんの若者に刺激をもらってきた。この年で物事への熱量を持てるのは、若い人とやってるから。ウチでノホホンとしてたら、ダメだと思うよ。

 《妻のスムージーも活力源》同じ劇団に所属する妻で女優の磯辺万沙子(64)が毎朝作ってくれるスムージーも活力の源だ。「ここ20年毎日欠かさず。向こうが仕事の時も、冷蔵庫に入れといてくれる。それを続けるのがどれだけ大変なことか」と内助の功をねぎらうと「全面的についてきてくれる存在というのは、当然じゃないんだよと感じる。家庭に感じる信頼感というのは大きい」と、感謝の言葉を口にした。

 《戦争の悲惨さ後世に》劇団昴公演「一枚のハガキ」は、3月16~20日、東京・代々木のこくみん共済coopホール/スペース・ゼロで上演される。太平洋戦争で戦死した戦友に、その妻から届いたハガキを託された帰還兵を巡る物語。昭和10年生まれで戦争を経験している語り部の一人。「僕にしかできない演出で、戦争の悲惨さを後世に伝えるのは義務だと思う」と意気込んでいる。

 ◇北村 総一朗(きたむら・そういちろう、本名聡一郎=そういちろう)1935年(昭10)9月25日生まれ、高知県出身の86歳。高知大卒業後、文学座や劇団雲を経て76年から劇団昴へ。「踊る大捜査線」の署長役で人気に火が付いた。10年の映画「アウトレイジ」では関東の巨大組織・山王会の会長役を好演し高く評価された。1メートル72。血液型A。

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