【令和新時代 夏のメモリー】近江のエース林 昨夏敗戦糧に「覚悟」の118球完投

[ 2019年8月12日 07:45 ]

第101回全国高校野球選手権大会 第6日2回戦   近江1―6東海大相模 ( 2019年8月11日    甲子園 )

<近江・東海大相模> 東海大相模打線相手に力投した林(撮影・大森 寛明)
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 エースの涙は止まらなかった。覚悟があればこその涙だろう。近江(滋賀)の左腕・林は、令和に薄れてしまうかもしれない「覚悟」を持ち、118球を投げきって敗れた。

 「チームを勝たせられなかったのでエース失格です。(多賀章仁)監督が“悪かった”と謝ってくれた。でも、監督を謝らせてしまったのは自分の責任です」。敗戦の全てを背負い込んだ。

 林の覚悟。それは全試合完投だった。1試合だけで終わったが、今夏、1メートル74のきゃしゃな左腕は勝ち続ける限り投げるつもりだった。

 「おまえがマウンドを降りるときはチームが負けるときだ」。多賀監督からそう言われ、林は覚悟を決めた。後ろに3年生がいた昨夏とは違う。この冬は、一大会投げきるための体力づくりに励んだ。投げ込みは1日150球から200球投げた。1日5~6時間走り続けた日もある。

 昨夏の甲子園。準々決勝で金足農(秋田)に逆転サヨナラ2ランスクイズで負けた。あの悔しさを忘れず、有馬との最強バッテリーで臨んだ2年連続の甲子園。林は開幕前、来年から導入される可能性のある球数制限について「あったら僕は困ります。全試合投げきれなくなる」と話していた。かつて一人で投げ抜くのが当たり前だった甲子園。林には“昔のエースのにおい”があった。

 令和最初の夏。林のような「覚悟」を持った投手がいたことを、忘れてはいけない。(秋村 誠人)

 《01年「三本の矢」で準V》昨夏の近江は背番号18の2年生・林のほか、松岡、佐合、金城の3年生投手の継投で準々決勝進出。準優勝した01年夏も近江の原動力となったのは継投。竹内、島脇、清水という3投手のリレーで初めて決勝に進出し、決勝は3投手の継投も及ばず日大三に2―5で敗れた。当時、3投手の継投は戦国武将・毛利元就の逸話に由来する「三本の矢」になぞらえられた。

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