4―0の危険なわな…能見 “もう勝った”の空気が招いた10失点

[ 2014年3月29日 07:15 ]

<巨・神>5回、アンダーソンに死球を与えて顔をしかめる能見

セ・リーグ 阪神4-12巨人

(3月28日 東京D)
 日本サッカー協会最高顧問など、要職を歴任した岡野俊一郎が「サッカーの2点差は危ない」と語っていたのを覚えている。まだまだJリーグなどなかった1970年代、テレビ解説だった。

 「1点ずつしか得点できないサッカーで2点リードは安全圏と言える。リードしている側に油断が生まれる。そして次の1点を失うと、今度は焦る。焦れば乱れ、また失点を重ねて同点になる」。東大出の岡野の言葉を説得力もって聞いた。

 野球で同じ話を阪神元監督の岡田彰布がしていた。「序盤3回までに4、5点をリードした時が危ない」。先ごろ出した『そら、そうよ~勝つ理由、負ける理由』(宝島社)でも記している。

 「チーム内に“もう勝った”という空気が生まれる。これが危ない。“次の1点を失ったら流れが相手に行くぞ”と引き締めるのだが……」

 まさに、この夜の阪神だった。3回表に大和、マウロ・ゴメス、マット・マートンと3本の適時二塁打が出て、大量4点を奪った。絶対優勢ではあるが、問題はやはり、次の1点だった。

 不安は的中し、能見篤史は2死から3連打で満塁とされ、ホセ・ロペスの走者一掃二塁打で3点を失った。もう試合の優劣などなく、流れは相手巨人に移っていた。

 「う~ん」と敗戦後、バッテリーコーチ・山田勝彦はうなり「そうかもしれません」と言った。なぜ山田に聞いたかと言えば経験があるからだ。22歳だった1992年4月8日の東京ドーム。2回裏までに0―4とされたが、3回表に斎藤雅樹から山田の適時打などで4点を奪い同点。5―4で逆転勝利した。また山田はオリックスコーチで監督岡田の下にいた。

 「確かに序盤に大量点をもらうと、バッテリーは“守ろう”という気になってしまうところがある。そこを何とかするのが役目ですが……」

 岡野や岡田の言う油断や焦りに加え、山田の言う受け身の姿勢も潜んでいる。「4―0」というスコアには危険なわなが隠されているのだ。

 後に大量失点したように能見は制球に苦しみ、不調は明らかだった。4―0でも油断はなく、「次の1点」の重要性も承知のうえで、大量失点してしまったのだろう。

 ただ、10失点はすべて2死からだった。むろん「野球は2死から」だが「あと1死」「あと1球」の踏ん張りがきかなかった。

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