石川佳純の沈黙の20秒 最終ゲームは屈辱の情けの1点

[ 2021年7月28日 12:10 ]

東京五輪 卓球 ( 2021年7月28日    東京体育館 )

準々決勝で敗退した石川佳純(ロイター)

 女子シングルス準々決勝で、石川佳純(28=全農)がユ・モンユ(31=シンガポール)に1―4で敗れた。ミックスゾーンでは20秒間、黙り込んだ。

 地元開催の五輪。悲願のシングルス初メダルを掲げていたが、夢が潰えた。記者を前に「満足のいく結果では全然ないけど、ここが踏ん張りどころ。団体戦へ向けて気持ちを切り替えて―」と口にした後に黙り込んだ。

 目に涙が浮かぶ。時が止まる。うんうん、と自分に何かを言い聞かせるように、2度うなずいた。口を開きかけた。しかし、もう1度、こみ上げるものがあったのだろう。報道陣に背を向けるように、後ろを向いた。再び時が止まる。前を向く前に、一度左側の遠くを見て、口を開いた。

 「―やらないといけない。キャプテンとして気持ちを切り替えて」

 通算8勝7敗の相手に苦しんだ。並んで迎えた第3ゲーム、12―11とゲームポイントを握ったところで、タイムアウトを取った。だが、ここで逆に相手が息を吹き返した。バックを攻められ12―12で並ばれると、2連続でフォアハンドをミスし、ここを落とした。

 もう流れは戻ってこなかった。第4ゲームは6―6から5連続失点で落とした。歯車が狂った。最終ゲームは10連続失点を喫した。

 卓球は「11―0で勝ってはいけない」という暗黙のマナーが世界的に浸透している。10―0になった場合、リードしている方が、わざと1点をプレゼントする。21点制時代のなごりで、11点制の今は薄れつつあるものの、ユはこの日、古くから対戦してきた石川に1点を譲った。

 12年ロンドン五輪で4位になり、16年リオデジャネイロ五輪は初戦で敗れた。3度目の舞台は、あまりにも悔しい形で幕を閉じた。

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