重量挙げ女子59キロ級・安藤 闘病中の父に届け!直前大ケガ乗り越え逆転銅メダル!

[ 2021年7月28日 05:30 ]

東京五輪第5日 重量挙げ女子59キロ級 ( 2021年7月27日    東京国際フォーラム )

重量挙げで銅メダルを獲得した安藤美希子(AP)
Photo By AP

 女子59キロ級で、安藤美希子(28=FAコンサルティング)が銅メダルに輝いた。スナッチは94キロの6位だったが、得意のジャークで120キロを挙げてトータル214キロで逆転表彰台。日本勢女子のメダル獲得は48キロ級で12年ロンドン五輪銀メダル、16年リオ五輪銅メダルの三宅宏実(35=いちご)に続き3大会連続となった。

 全てを出し尽くした。ジャーク最終3回目の試技。2回目で失敗していた120キロを挙げて暫定2位に浮上すると、喜びと疲労で全身を震わせながら台に膝まずいた。両脇をコーチ陣に支えられても足元はフラフラ。右膝にアイシングしながら待つ間に1人に抜かれたものの結果は3位。「結果を形に残せた。本当にうれしい」と歓喜の涙を流した。

 直前の大ケガを乗り越えた。有力選手の欠場や出場回避でメダル獲得が有望視される中、五輪直前の今月5日に不運が襲った。ジャークの練習中、バーベルを首元で受けるクリーンに失敗。120キロが右膝頭を直撃し、脚は腫れ上がった。まともな練習は1週間前から。直前練習で挙げたのはジャークの115キロが最高だった。

 ケガを周囲にひた隠す中で始まった本番。スナッチは2位に2キロ差の6位でまとめた。ジャークが得意な安藤が万全なら2位を軽く抜ける位置だが「全く気が抜けなかった」という。1本目はベストから15キロも軽い116キロを苦悶(くもん)の表情で成功させ、120キロは失敗した。ここで銅に狙いを定め、最終試技で同重量を執念で挙げた。小畑監督は「侍のようだった」と声を震わせた。

 闘病中の父・美生(よしお)さん(65)へ最高のプレゼントとなった。22年前に脳出血で倒れ、右半身が不自由になり、失語症が残った。今年1月には新型コロナウイルスに感染して入院した。命の危険もあり、直接の面会が許されない中、安藤はぼろぼろ泣きながら「頑張って。治って。私、東京五輪に出るんだから。見て!」とタブレット端末越しに叫んだ。

 58キロ級で5位だったリオ五輪後、元日本代表コーチの金度希さん(韓国)の下で力を伸ばし、重量挙げでは今大会の表彰台第1号。「自国開催でのメダルという目標を達成できてうれしい。家族にも早くメダルを掛けたいし、コロナが落ち着いたら韓国のみんなにも見てもらいたい」。嵐のような3週間を乗り越え、最後は晴れ晴れとした笑顔をのぞかせた。

 ◇安藤 美希子(あんどう・みきこ)1992年(平4)9月30日生まれ、千葉県出身の28歳。埼玉栄高、平成国際大出。リオデジャネイロ五輪は58キロ級で5位入賞。その後は韓国で鍛えた。19年世界選手権は59キロ級で5位。1メートル55。

続きを表示

この記事のフォト

2021年7月28日のニュース