松本零士さん SF漫画の原点は陸軍パイロットの父 疎開中に育んだ宇宙への憧れ

[ 2023年2月20日 20:10 ]

松本零士さん
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 「銀河鉄道999」「宇宙戦艦ヤマト」など宇宙を舞台にした人気作品を手掛けた漫画家の松本零士(まつもと・れいじ、本名晟=あきら)さんが13日午前11時、急性心不全のため東京都内の病院で死去した。85歳。福岡県出身。

 壮大な宇宙を舞台にしたSF作品が世界中で愛された松本さん。大きな影響を与えたのは、陸軍パイロットだった父・強さんだった。航空機工場で新型機の試験飛行を担当。家には飛行や戦闘用の道具が置いてあり、松本さんが兄と拳銃で遊んでいると、こっぴどく叱られた。メカや武器が好きなのはこの頃からだ。

 第2次世界大戦の末期には愛媛に疎開。米軍のB29戦闘機の大軍が頭上を通る。爆弾が落ちる怖さを体験した一方で、見上げた星空の美しさは宇宙への憧れを大きくした。

 終戦後に父は捕虜となり、再会できたのは1年後。公職を追放され、貧乏生活を送ったことで反骨心が生まれた。父から聞いた戦争体験で学んだ「命の尊さ」を「戦場まんがシリーズ」などの作品を通して訴え続けた。

 膨大な科学知識に基づくメカ描写は、多くのSF作品の原点となった。「誰も傷つけない作品にしたい」と、歴史、思想、宗教、信条、さまざまなことを熱心に勉強した。作品が万国共有に愛されたのはそれ故だった。

 非現実的なSF作品でも、描いたのはどこか現実的な人間ドラマ。描く主人公の男は「銀河鉄道999」の星野鉄郎のような胴長短足でぶさいくが相場。血の通った人間を描き続けた。上京後に本郷の下宿先「山越館」で経験した4畳半の貧乏生活が大きく影響した。大好きなラーメンもたびたび作中に登場。舞台の宇宙とはアンバランスにも思えたが、「人類の永遠の口の友」のセリフは最も人間らしさが表れている。

 ロマンチストでもあった。運命に導かれるような物語の展開を好み、キザなセリフも多い。キャプテンハーロックは「俺の旗の下に俺は自由に生きる」が信念だった。貧乏暮らしの現実から、宇宙へのロマン。作品に投影されたのは、リアリストでロマンチストの松本さん自身だった。

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2023年2月20日のニュース