「鎌倉殿の13人」番組CPに聞く「三谷大河4作目は?」今作への覚悟と大河愛「新選組!」最終回秘話も

[ 2022年12月31日 11:00 ]

大河ドラマ「鎌倉殿の13人」最終回(第48話)。北条義時(小栗旬)に寄り添う政子(小池栄子)(C)NHK
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 脚本・三谷幸喜氏(61)と主演・小栗旬(40)がタッグを組み、視聴者に驚きをもたらし続けたNHK大河ドラマ「鎌倉殿の13人」(日曜後8・00)は今月18日、最終回(第48回)を迎え、完結した。今作に懸けた思い、早くも待望される4作目の三谷大河について、制作統括の清水拓哉チーフ・プロデューサー(CP)に聞いた。

 キャラクター誰一人残らず三谷氏の愛が注がれた笑いと涙の群像劇。米の勘定が向いていたはずの伊豆の小豪族の次男坊から“漆黒の執権”への北条義時の変化を、小栗がまざまざと体現。視聴者を没入感に導く演出や音楽、各キャストの熱演が化学反応を起こし「大河最高傑作」の呼び声も高い。

 2001年のNHK入局以来、清水CPが演出やプロデューサーとして大河ドラマに携わるのは実に7作目。大河を知り尽くした“ミスター大河”。04年「新選組!」は助監督として、16年「真田丸」はプロデューサーとして三谷大河を支えた。

 今回は制作統括としてチームを率いる立場に。「真田丸」→「鎌倉殿の13人」のインターバルは6年。ファンにとっては長く感じられるかもしれないが、準備期間も含めると、制作側にとっては「わずか6年」だった。

 「真田丸」は多くの賞も獲得した人気作品だけに、清水CPは「わずか6年で三谷さんともう一度大河を作ると決めた時、一番最初に決意したのは『真田丸』のパート2には絶対しない、『真田丸』の二番煎じとは絶対思われたくない、ということでした。『真田丸』の制作や演出のスタッフには『新選組!』のOBが大勢参加したんですけど、それは、熱狂的なファンはいたものの視聴率が振るわず、局内的にも一般的にも評価が高くなかった『新選組!』のリベンジの側面がありました。半ば生き残りの隊士の気分で僕らは参加したんです。でも今回は、クリエイターとして全く新しい作品に挑戦する覚悟を決めないと、必ず失敗する。リーダーの自分が『真田丸』の成功体験を安易になぞろうとするかもしれない。『真田丸』のことなんか関係ない、とゼロから考えられるチームでないとダメ。そう考えた時、『鎌倉殿』は敢えて『真田丸』とは全く違うメンバーで臨む、という決断をしたんです。『真田丸』のチームは今思い出しても最高のメンバーで、彼らに頼らないと決めたのはつらかったし、不安でもありました。自分としては大博打でしたが、三谷大河に初めて触れるスタッフたちから、新しいアイデアがどんどん生まれてきたのは本当によかったと思います」と明かした。

 「ドラマを貫く絶妙に乾いたトーンは、チーフ演出の吉田照幸ディレクターを中心に、彼らが今回の三谷脚本に真っすぐ向き合った結果です。一方、本当に自分だけだと心細すぎるので、『真田丸』の演出陣から1人だけ、保坂慶太ディレクターに頼み込んで参加してもらいました。彼は『真田丸』の後にロサンゼルスに留学していて、アメリカの連続ドラマのような中毒性を生み出すノウハウを持ち込んでくれました」

 一方、「鎌倉殿の13人」の広報やイベント展開は「真田丸」以来のプロデューサー陣が担った。

 「ウェブ媒体やSNSを通じた攻めの広報や、全国各地で毎週のように開催したイベントの戦略は、『真田丸』のスタイルをさらに進化させました。ポイントはメディアやファンの熱量が上がるように、ドラマの内容をただ伝えるだけでなく、広報やイベントそのものを魅力的なコンテンツとして作る執念です。三谷大河は、このスタイルに特に相性が良いのだと思います。良い意味で“ネタ”を供給し続けるチャーミングさがあります。担当の川口俊介プロデューサー、吉吉岡和彦プロデューサーはバイタリティーが圧倒的で、特に終盤の怒涛の広報・イベント展開は彼らでなければ実現しなかったでしょうね」

 そして、期待が高まる三谷大河4作目の可能性は――。最後に尋ねた。

 「三谷さんがおっしゃっていたのは、テレビドラマの脚本家としてこれほど腕を振るえる場所はなかなかないので、たくさんの脚本家に経験してほしい、ということ。と同時に、だからこそ、自分も何度でもチャレンジしたいと。これに尽きるかなと思います。僕が個人的に思うのは、中堅・若手の脚本家さんたちが『自分に書かせろ』と頑張る、三谷さんも『負けてなるものか』とまた頑張る、それが本来あるべき姿なのかな、と。『新選組!』は、ベテラン俳優が演じてきた新選組を、実際の彼らの年齢に合わせた若手キャストによる青春群像劇として描き、それまで大河ドラマにあまり興味のなかった若者たちを惹きつけた画期的な作品だったと思います。助監督ではありましたが、僕もその一人でした。今回の『鎌倉殿の13人』も、若いクリエイターたちが刺激を受けて、大河ドラマをさらに面白くしていくきっかけになれば、うれしいですよね」。“大河愛”がにじみ出た。

 締めの質問だったが、話はさらに18年前にさかのぼる。清水CPの原点は、入局3年目の「新選組!」。当時は駆け出しの助監督。その最終回にまつわる忘れられない体験がある。

 「最終回の台本の最後には『カーテンコール』と書いてあって、あらゆる登場人物たちの名場面を振り返るミニ総集編コーナーのような仕掛けになっていました。これを、三谷さんが『清水さんに編集をさせてほしい』と当時のCPに相談してくれたのです。三谷さんがどうしてそんなことを言い出したか。当時、毎回のタイトルバックの出演者名のテロップは、僕と先輩助監督2人の3人が週交代で入れていました。僕は新人で必死だったので、映像のカットの変わり目と、テロップの切り替わりのタイミングがマッチするように細かく調整して入れていました。三谷さんは毎回のタイトルバックを見ていて、3週に1回、この映像とテロップのマッチが最初から最後までキッチリしていることに気づいた。CPを通じてその理由を知り、3人の中で唯一、演出を担当しなかった僕にチャンスをあげられないかと掛け合ってくれたのです。CPはとんでもないと断ったそうですが、それを聞いたチーフ演出の清水一彦さんが『オレがやったことにして編集していいぞ』と、こっそりやらせてくれました。そんな細かいところまで見ていて、しかも一番の若手に大役を任せようと言ってくれる三谷さんに驚き、何としても恩に応えようと頑張りました。ちょうど丸18年経ったので、時効でしょう」

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